イナイレ
□ラブハプニングなんて
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「そういえば、タオルがまだ来てないみたいよ」
「あっ…!」
秋ちゃんの言葉を聞き、血相を変えて走り出す。
今日は私がタオル当番で、それを見事に忘れていた。
タオルの置いてある用具室に飛び込み、積んである中から人数分をとり再び走り出す。
私が当番を忘れることは度々あるので、一発で数を取り出すことができる。
…自慢できることではないのだが。
「あと2分…」
休憩までの時間を腕時計で確認し、廊下の角を曲がろうとしたとき…
「あっ」
「えっ?」
背中に痛みが走る。
と、同時に胸部から腹部までの圧迫感も感じた。
「った…」
思わず呻き声が漏れる。
「…あ…えっ?わ、悪い!」
見ると、私の上に風丸が…風丸が!?
「風丸ゥゥゥ!?」
曲がり角でぶつかって、風丸が私の上に覆い被さるようにして転んでしまったようだ。
「すまない!」
すごい速さで退き、怪我はないか?と聞いてくる。
「大丈夫…それより、こちらこそごめんね」
謝れば、いや、俺の不注意だから謝るな、と視線を逸らした。
「ナマエちゃーん?」
遠くから聞こえる秋ちゃんの声で、やっと本来の目的を思い出しタオルを拾おうとすれば、風丸が私より先にタオルを拾った。
「お詫びに、これは俺がやる」
「それは悪いって…!」
「気にするな。…むしろミョウジと一緒に居れて嬉しいからな」
「え?」
「いや、なんでもない」
ラブハプニングなんて
これは、期待してもいいのだろうか。