イナイレ

□新しい関係
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「そうそう、そんでそのとき綱海がさあ、」

「また綱海か」


放課後の教室のベランダ。
外を眺めながらの音村との雑談で綱海の名前を出せば、音村は呆れたように笑った。


「本当に綱海のこと好きだな」

「うるさい」


そう、私は綱海のことが好きだ。
友だちとしてではなく、異性として。
それでよく音村に話を聞いてもらったり、相談にのってもらったりしている。


「もう付き合っちゃいなよ」

「いや待てよ、私告白できないチキンだって言ってるじゃん」


だからこうして話聞いてもらったりしてるんじゃん、と言えば、あはは、そうだね、と笑われる。


「向こうは私のことは女子として見てないんじゃないかなー」

「またそういうこと言う」


よくメールとかもするし一緒に帰ったりもするけど、それは友だちとしてであって。
行動はカレカノのそれだとしても、甘い雰囲気なんて微塵もない。
…いや、綱海に甘い雰囲気はちょっと無理がある気もするけれど。


そんなことを考えていれば、制服のポケットに入れていた携帯が震えた。


「あ、噂をすれば綱海だ」


ディスプレイには、綱海条介の文字。
音村にごめん、と断りを入れてから電話に出れば、無駄に大きい声で「ナマエ?」と言われる。


「だから声大きいって」


前も言ったでしょ?と言えば、悪い悪い、なんて悪気のなさそうな感じで謝られる。


「どうしたの?」


メールではなく電話ということは何か急ぎの用事でもあるのかな、と思い聞いてみれば、綱海は「んー…」と言葉を濁した。


「?」


どうしたのだろう?私、何かしたっけ、なんて考えていれば、ようやく綱海が口を開いた。


「お前、まだ学校にいるか?」

「いるけど…」

「部室?教室?」

「教室のベランダ」

「よし、今から行くからちょっと待ってろ!」

「え、何か…」『プツッ』


何かあったの?と言おうとすれば、一方的に電話を切られる。


「なんだって?」


音村が心なしか楽しそうに聞いてくる。
まあ、直前まで綱海の話をしていたからだろう。


「今から行くから待ってろだって」


なんだろう?と音村に聞いてみる。


「ホント?じゃあ、俺もうそろそろ行くわ」

「え、なんで?」


そう問いかけるも、じゃ、と自分の荷物を持って出ていってしまった。



「ったく、結局何なのよ…」


1人呟きながら教室に入り、自分の荷物を持ち扉に歩み寄る。


「ナマエ!」


扉を開けようとした瞬間、綱海が勢いよく扉を開けた。


「…っ、びっくりした…」


「わ、わりい」


このタイミングで来るとは思わなかったので、思わず声に出せば謝られる。


「いや、大丈夫。…で、どうしたの?」

「俺と付き合え!」

「…は?」


いきなりの展開に訊き返せば、だからよぉ、と綱海が続ける。


「だから、ナマエが好きだ。お前、俺がどんだけアタックしても普通だったから駄目かと思ってたんだけどよ…音村から聞いてさ。両想いなんだろ?俺たち」

「…はい?」


ちょっと待ってね、と頭の中で今し方綱海が言った言葉を整理する。


「綱海も、私のことが好き?」

「おう」

「それで、告白?」

「ああ」




「……!」


意味が理解できると、顔に熱が集まってくるのがわかった。
恥ずかしくなって両手で顔を覆えば、で、どうなんだ?と聞かれる。


「…どうだも何も、知ってんじゃん」

「でもナマエの口から聞きたい」


手をずらし綱海の方を見れば、ちょっとだけ困ったような、でも嬉しそうな顔で笑っていた。


「私も、綱海のことが…好き」














新しい関係

「じゃあ…帰っぞ」

そう言って出された左手が、どうしようもなく愛おしかった。











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