イナイレ

□立場逆転
1ページ/1ページ









「ねえ、綱海」


だるい授業が終わって3分。
ふとあることを思いつき後ろの席の綱海に話しかければ、「なんだ?」とあのあっけらかんとした調子で綱海が答える。


「あのさ、自分よりも料理ができない女子ってどう思う?」

「は?何だよいきなり」


不思議そうに綱海が聞き返す。
まあ不思議がるのは仕方がないだろう。
自分でも、少し唐突過ぎたな、と実感している。


「ふと思ってさ」


深い理由は…あるといえばあるのだが、これは今綱海本人に言えることではないため秘密にしておく。
理由はどうであれ、今ふと思ったことに違いはないためそう答えれば、うーん…と綱海がうなり始めた。


「自分よりできない…っつっても、”自分のために頑張って作ってくれる”っていうのが嬉しいんじゃねーの?」


やっぱ気持ちが大事だろ!と、少し考え込んでから綱海が言った。


「気持ちかあ…」


しかし、これは綱海の考えなのかはたまた一般論なのか。
そこがわかりにくいが、私が知りたいのは前者だ。
多分、ここでこの話を終わらせたら後ほど確認するのは難しいだろう。
でも、ここでこれを尋ねたら少し変に思われるかな、なんて考えたりもするが、少し考え込んでいた私に「どうした?」といつものお気楽そうな笑顔で尋ねてくるのを見るあたり、大丈夫な気がする。
よし、と意を決して「あのさ」と口を開けば「ん?」と綱海が聞き返してきた。


「じゃあさ、綱海的にはどう思う?」

「え?俺的に?うーん…」


聞いてから、さっきのが綱海の意見だったら嬉しいな、なんて思ったりもしたが、再び考え始めたからさっきのはきっと一般論だったのだろう。


「うーん…」

「……」


待っていれば、「俺は、」と綱海が口を開いた。


「俺は、できなくても全然良いと思うぜ?つか、好きな奴とかには自分で獲ってきた魚を料理してあげてーな!」

「マジ?」


綱海らしいといえば綱海らしい。
「できない奴は論外」とかそういうことを言われなくて良かった、なんてホッとしていたら、綱海がなあ、と私の顔を覗き込んできた。


「え、何?」


ちょっと吃驚して慌てて返事をすれば、アハハ、と笑われる。


「もう、吃驚したんだってば。…で?」

「ってことでさ、今度俺んち来いよ!うまいもんご馳走してやっから」

「あ、ありがとう。…て、え?今なんて言った?」


綱海の答えに聞き返せば、だからよ、と言葉を続ける。
だが、そんなちょっと面倒くさそうに言われてもこの流れじゃ話の聞き返すでしょ、なんて思ってしまうのは私だけではないはずだ。


「だから、今度俺の手料理振舞ってやるって」

「…それは、話の流れ的に…」

「ああ、告白って受け取ってくれて構わないぜ!」


当然のように答える綱海。
…天然なのか確信犯なのかわからないが、こいつには敵わない、ということを改めて実感した。














立場逆転


「言ってみたいセリフを言われちゃうとは思わなかった」

「ハハッ。でも、お前が知りたかったのってこういうことだろ?」

「それはそうだけど」





















-------------------------------->

新春綱海企画!
1作目はお料理の話題です。
綱海さんって魚とかはさばけるらしいじゃないですか。
だから、これはもう使うしかないと前々から狙っていました実は←

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ