イナイレ
□抜けるような青い空に
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「やっと一日が終わったな」
帰り道、隣を歩く条介が伸びをしながら呟く。
「うん」
隣を歩いているのに、何故か遠くに感じて。
条介の呟きに答える自分の声も、どこか遠く聞こえる。
「どうしたんだよ」
「え、何が?」
条介の問いに聞き返すも、彼が何を言おうとしているのかは私にもわかっている。
条介にはサーフィンやサッカーっていう才能を生かせるものがあって、それ故女の子にもモテる。
それなのに私なんかと付き合ってくれて、不安になったりもした。
でも、そんな不安をいつも条介は見透かして、私のことを本当に好きでいてくれていることを伝えてくれた。
条介のことを疑っている気持ちは、全然ない。
でも、心のどこかで、見えないものに対して嫉妬している私がいて。
そんな自分自身がどうしようもなく嫌いで情けなくて、こんな状態で条介と一緒にいるのが嫌だった。
「何がって、見てればわかるぜ。何をそんなに考え込んでんだよ」
「……」
条介には何の非もない。全部、私が勝手に悩んで勝手に自己嫌悪に陥っているだけなのに。
心配をかけていることにも嫌気が差す。
「条介」
小さく名前を呼べば、「なんだ?」と心配そうに聞き返してくれた。
「…。…別れよ」
「…は?」
これ以上心配をかけるわけにはいかない。
そう思い、最近、考え始めた選択肢を条介に言えば信じられない、という顔をされた。
「…どういうことだよ」
いつもの条介からは想像のつかないような低い声で尋ねられる。
「もう…駄目だよ。私、条介が思ってるほど綺麗な人間じゃない。こんな嫌な奴、条介と付き合う資格なんてないんだよ」
「お前、まさかまた釣り合わないとか考えて…」
「違う」
はっきりと否定すれば、じゃあ何なんだよ!と悲しそうに条介が叫ぶ。
「もう、こんな自分が嫌なの。ただ条介が隣にいるだけじゃ満足できなくて、じゃあどうすれば満足できるのかって考えたら答えなんて見つからなくて…こんなんじゃ、条介に迷惑かけちゃうばかりだよ。だから…」
別れよう、と続けようとした言葉は、パシンという乾いた音と共に感じた頬の痛みによって遮られた。
「…痛っ…」
「馬鹿野郎!!」
低いだけじゃなく、怒気のこもった声。
吃驚して、痛む頬を押さえながら条介の方を見れば正面から抱きしめられた。
「ちょっ…」
「何勝手なこと言ってんだよ?それでも…俺がナマエを好きなこと、ナマエが俺を好きなことに変わりはねーんだろ?なら、いいじゃねーかよ…!」
抱きしめる力が強くなる。
条介、と呼べば、だからよ…と先を続ける。
「迷惑かけたっていい。全部受け止めてやる。だから…別れるなんて、言うなよ」
そう言う条介の声はとても弱弱しくて、私が今まで考えていたことは条介に対してとても失礼なことだったんだ、ということを実感した。
「条介、ごめん…好きだよ…っ」
こんな勝手な事を並べてもそう言ってくれたことが嬉しくて、条介の背中に手を回して抱きしめたら条介は「…ああ。俺は…愛してる」と、いつもの優しい声で言った。
抜けるような青い空に
あの空のような透き通った心になったとき、私からも愛してると伝えたい。
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綱海でシリアスとか切を書けたら最強になれると思ったんです。
それで第3弾には暗めなお話を持ってこようと…
しかし珠亜クオリティー!
もう途中から何書いてんのか自分でもわかんなくなりました。