イナGO

□立秋
1ページ/1ページ

「今日って立秋なんですね」

「へぇ。それにしては暑いな」

今日からは暦の上では秋になる。
しかし、そんなことはお構いなしに太陽の輝きが衰えることはない。

「にしても暑いな」

「二回も言わなくていいです」

扇風機の前という特等席は私に譲ってくれてるが、どうしても汗が出てくる。
それに比べて、南沢先輩は全くかいてない。


「なんでそんな涼しそうな顔なんですか?」

「さっきから暑いって言ってんだろ」




「でも、秋っていいですよね」

「…は?」

いきなり話題を変えた私に、先輩が顔をしかめる。

「お月見とか楽しいじゃないですか」

「渋いな」

「お月見ナメないでください、心が浄化されますよ」

「意味わかんねぇよ」

そんな風に私が一方的に語るのも、いつものこと。

すると、先輩が何かを企てた時の笑顔でこっちを見た。


「んじゃ、私ちょっと…」

先輩がこういう笑顔のときはろくなことを言わないので、この場から立ち去ろうとすると腰を掴まれて元の位置に戻された。

「じゃあさ、秋になったら月見しようぜ?」

「…え?」

「その代わり、月見団子作ってこい」

いや、そんな「名案だろ」みたいな顔
で言われても。

「先輩のが渋くないですか。っていうか作り方知りません」

「おばあちゃんにでも聞け」

マジで?という顔で先輩を見れば、マジで。という顔をされた。




「…しょうがないなぁ。十五夜になったらですよ」

「あぁ。楽しみに待ってる」



立秋

なんだかんだで、今年のお月見は楽しくなりそうだ。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ