イナGO
□結局はバカップル
1ページ/1ページ
「拓人の馬鹿!」
「は?急にどうし…」
「惚けないでよ!」
サッカー部部室。
俺らのキャプテンとマネージャーは、人目もはばからず部室の真ん中で喧嘩を始めた。
「始まりましたね」
「ほっとけ」
倉間と速水はいつものことだしな、とあまり興味を示していないみたいだが、浜野と南沢さんは
「今日は何が原因なんだ?」
と若干楽しそうにしている。
そんな俺たちには目もくれず、二人の喧嘩は続いてく。
「私より可愛い子に告白されやがって!」
「はぁ!?」
ナマエが怒っている理由に思わず声が出るけど、本人達には聞こえてないようだ。
というか、ナマエ半泣きじゃないか。
「あれはちゃんと断った。あいつよりナマエのが全然可愛い。…それにそれを言えば、ナマエだってこの前バスケ部の奴に告白されてただろ…!あいつ、『神童なんかより俺と』とか言ってたけど…どうなんだ?」
今度は神童が泣きそうだ。
「断ったわよ!断ったからこうして今も拓人と付き合ってるんじゃない」
「大体、お前は誰にでも優しいからああいう奴が寄ってくるんだ…」
「それ言ったら拓人だって試合かっこよ
くゲームメイクしてるから、いろんな女の子が寄ってきちゃって…」
「あいつら、さり気なくお互いのこと褒めてるよな」
倉間の呟きに一同が頷く。
「ちゅーかさ、あれって喧嘩なの?」
「ただのバカップルだ」
「つか、もうそろそろウザくなってきた。霧野、止めてこいよ」
「南沢さん、無茶振りやめてください」
いや、でも止められるのお前しかいないだろ、と言われれば、黙るしかない。
確かに倉間は逆に2人をいじめそうだし、浜野はノリで喧嘩をヒートアップさせかねない。
速水に至っては、気の弱さで止めることなんて無理だろう。
なんで俺が、と思いながら2人の方を見れば、神童がナマエにキスをしていた。
「俺にはお前しかいないから。…信じろよ」
「私も、拓人しかいない」
「霧野、訂正だ。あいつら一回殴って来い」
「了解です、南沢さん」
結局はバカップル
なんか俺たちの方が疲れたんだけど。