イナGO
□新たな火花
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「霧野くん?」
部活の休憩時間。
昇降口の水道まできて顔を洗っていれば、後ろで聞き慣れた声がした。
「ミョウジ?」
顔を上げず確認する。
「うん。霧野くんは今休憩中?」
「ああ。…ミョウジはこんなとこで何やってるんだ?」
今日はお前、部活ないんじゃないのか?と付け足し顔を拭きながら振り向けば、美化委員会と書いてある紙製のファイルを俺の前に出して「今日、委員会でさ」と言った。
「ああ…」
そう言えば、神童とか倉間も委員会で部活遅れるとか言ってたな。
そんなことを考えていると、倉間の声が聞こえてきた。
「おいナマエ、こっちは終わったぞ」
委員会ファイルをひらひらさせて、俺たちの方に近づいてくる。
どうやら、同じ委員会らしい。
「マジ?私あと此処で終わり」
ファイルに挟んでいたシャーペンを取り、俺が使っていた水道の清潔さや石鹸の有無、掃除用具の点検をしてく。
「ごめん、お待たせ」
「ったく、おせーよ」
じゃ、部活頑張って、と言い、倉間と並んで校舎に入っていく。
「あ、ミョウジ!」
呼び止めれば、ミョウジは足を止め振り返った。
「なに?」
遅れて倉間も足を止め振り返る。
「お前さ、後期も委員会やるか?」
「うん」
「同じ委員会?」
「そのつもり」
なんで?と不思議そうにしていたが、今度は倉間の名前を呼べばなんだよ、と無愛想な返事が返ってきた。
「俺、後期は美化委員会やるからよろしくな」
すると、倉間はふっと笑って答えた。
「悪いな、俺もやるつもりだ」
新たな火花
これは、新しい戦いが始まりそうだ。