イナGO
□不安要素交換剤
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新入部員が入って一週間。
相変わらず、松風たちはホントのサッカーをやるなんて言ってやがる。
アイツらはフィフスセクターのことを知らないから、あんなこと言えるんだよ。
みんな我慢してやっているのに。
きっと、こう思っているのは俺だけじゃない。
部室を見回せば、みんなの疲れている顔が目に映る。
ったく、俺たちにどうしろって言うんだよ。
しかし、そんな誰に向けたらいいのかわからない疑問を抱いても考えは堂々巡りをするだけで。
もうそろそろ帰ろう、と、みんなに声をかけて部室を出れば、扉の横でナマエが待っていた。
「遅い」
「ああ…悪い」
考え事してたら自分で思っていたより時間が経っていたらしく、ナマエが不満そうな顔で言った。
これは自分が悪いので素直に謝れば、「わかれば良し」なんて笑って、「じゃあ帰ろうか」と歩き出す。
「…なあ」
さっきのことをナマエに聞いてみようと思い、口を開けば何?と俺の方を向いた。
「お前、松風たちのことどう思う?そして、俺たちはどうすればいいと思う?」
「どうしたの、いきなり。…天馬くんたちかあ…良い意味で、KYかな」
「良い意味でKY?」
意味がよくわからずに聞き返せば、うんと頷く。
「みんなの顔を見たうえで、正しいことは正しいって胸を張って言ってる。…それに比べて典人は悪い意味で空気読んでるけどね。天馬くんかわいそう」
「うるせーよ」
つか、俺は自分の思ったことを言ってるまでだ。
そう言えば、ハイハイと流される。
「で、典人たちはどうすればいいのか、か…」
そこで、ナマエがうーんと唸った。
さあ、どんな答えがでるか。
俺にはやっぱり、どうすればいいのかわからない。
でも、ナマエならわかる気がした。
「自分のしたいことをすればいいんじゃない?」
「…え?」
どんな答えを想像さていたわけでもないが、まさかこんな答えが返ってくるとは思わなくて聞き返してしまう。
「なんていうか…天馬くんみたいに、ホントのサッカーを貫くのもいいと思うし、このままフィフスセクターに従うのも悪くはないんじゃないかな」
「…」
「天馬くんの気持ちもわかるけど、みんなが言う通り逆らったらサッカーができなくなるかもしれないんだし。…だから、典人がやりたいようにすればいいんじゃない?」
…このやりたいことがわからないからナマエに相談してみたのだが、結局その答えは出ていない。
しかし、それでも、さっきまで胸にあったモヤモヤした気持ちはなくなった気がした。
「俺のやりたいように、か…」
「うん。迷うだけ迷えばいいと思う」
…じゃあ、ナマエの言う通り、無理に答えは出さなくてもいいかもな。
そんなことを考えながらありがとよ、と小さく呟けば、ナマエがどういたしましてと笑った。
不安要素交換剤
お前はいつだって、こうして俺の不安を取り除いてくれる。
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困った倉間を書きたかっただけなんです、すみません(´・ω・`)