イナGO

□シュガーレス
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「ナマエ、ちょっと待て」

「え…」

「ほら、お返し」

「うわお南沢さんさっすが!!」



部活が終わったからさあ帰ろう、なんて意気揚々と部室を後にしようとしていた私を引き止めた南沢さんに内心なんだよとか思いつつ振り返ってみると、差し出された小さな紙袋。
ついなんだよ、とか思ってしまったことも忘れ、テンションが上がりそれが声にもあらわれる。

今日は3月14日。
マネージャーということでバレンタインにみんなにお菓子をあげていて、ほとんどの部員が部活が始まる前に一気に持ってきたためまだ誰にお返しを貰ったか把握しきれていなく、てっきりもうこの人からも貰ってるかと思っていた。
…いや、自分の彼氏からのお返しを貰ったと思い込んでいた私も私なのだが。


そんな風に相変わらず自分でもよくわからない思考回路でそんなことを考えていれば、南沢さんが「お前このあと暇か?」と尋ねてきた。


「暇っちゃ暇です」

「じゃあここでそれ食ってけよ」

「は?」


貰ったものを本人の目の前でいただくというのは如何なものかと思い帰ってから食べようと思っていたから、思わず聞き返せばとりあえず座れ、と促される。


「それ、手作りだから。紅茶のクッキー」

「すごい…!」


ちなみに手作りのあげるの、お前だけだから、という言葉に嬉しく感じながら、南沢さんの隣に腰を下ろす。
そして、お言葉に甘えて袋をあけてみれば何も申し分ない、綺麗な形のクッキーが中に入っていた。
…これはアレか、私があげたやつよりも美味しいパターンか。
まあ悔しいけど…南沢さんなら、いいかな。
そんなことを考えながら、いただきます、と一つ口に入れてみれば南沢さんがどうだ?と聞いてきた。


「すごい美味しいです…!」


ほら来た私より美味しいパターンだ。
…でも、少し甘さが足りない気がする。
女子だから、というのを気にして甘さ控えめにしてくれたのだろうか。
しかしながら、甘党中の甘党の私にとってはちょっと物足りない気もする。


「もうちょっと甘くても美味しいかな…?」


思わず口に出してしまえば、南沢さんがん?という顔をする。


「あ、いや、なんでもないです」


流石にもらっておいてここまで求めるのは我侭だろう。
そう思いあはは、とはぐらかせば、南沢さんがちょっと意地の悪そうな顔をした。



「ほら」

「…え……んっ」


頬をプニっとつままれてそのまま南沢さんの方を向けば、唇と唇が重なった。
…いや、誰のってもちろん私と南沢さんの。

そして、いきなりのことに驚いていれば、唇を割って何かが口の中に入ってきた。


「ちょっ……甘、い…?」


何してくれるんですか、と咎めようとするも、口に広がった甘さに言葉を漏らす。
…どうやら呟いたのが聞こえていたみたいで、食感からすると…角砂糖を入れてきたらしい。



「これで少しは甘くなったか?」

「…はい」



…そして、私はこのときの南沢さんのしてやったりな顔からこの人は最初から全て見通していた確信犯だったということを察したのであった。
















シュガーレス


「次はレモンでも入れて作ってみるかな」

「レモンの前に砂糖は規定量ちゃんと入れてください」






















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先日のネタシチュ募集でレイ様よりご提供いただきました南沢さんのホワイトデーのお話\(^o^)/
参加ありがとうございました!

でもいますよね、女子よりお菓子作りが上手い男子。
私の周りはそんな男子が多くてホワイトデーは半泣きでした。('◉◞⊖◟◉` )

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