イナGO
□異口同音
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「は〜あ…」
とても憂鬱な気分だ。
思わずため息が漏れる。
…こんな憂鬱な気分になるのは私が女の子だという証拠、と考えることもできるが、今はそんなことに喜んでられる余裕はない。
全く、私はどうすればいいんだ。
そんな風に頭を机にくっつけて突っ伏していれば、後ろからつんつん、と背中をつつかれた。
「そんなため息なんてついて、どうしたの?」
「ああ、青山」
どうやら、先程のため息を聞かれていたらしい。
ちょっと心配そうに首をかしげている。
「いやあ…最近ちょっと太っちゃってさ…ダイエットしなきゃ、って考えたら気が重くて」
…そう。
昨日、久しぶりに体重計とやらに乗ってみたらそれはもう見事に、何ヶ月か前に計った時より増えていたのだ。
それが筋肉とかなら全然問題はないのだが、最近お腹の触り心地がよろしくなってきたかな、なんて思っていた矢先だったからこれは確実に太っている。
標準体重よりは少ないが、なにせみんなが細い。
これは気にしても仕方がないだろう。
どうしよう、なんてつぶやきながら青山にそう言えば、青山はえ〜、と声を上げた。
「全然気にすることないと思うよ?」
「嫌味にしか聞こえないよ青山くん」
そんなほっそい脚で言われても、と口をとがらせれば、青山は青山で言うなって、と口をとがらせる。
「俺はこれでも気にしてんの。筋肉欲しいんだから」
「はいはい」
軽く受け流せば、もうーと私より様になるようなかわいい拗ね方をする青山。
男だけど羨ましいなオイ、なんて思いながらはあ、ともう一度ため息をつけば、青山がでもさあと口を開いた。
「女の子はふっくらしてたほうがいいと思うよ?女子が思うほど男子って気にしてないし」
「ふっくらにも限度ってものがあるでしょ…!というか男子って大体そう言うんだよ。でも実際付き合うってなったりすると気にするんだよきっと」
半ば吐き捨てるように言えば、わかってないな、なんて青山が言う。
「言っとくけど、俺にとってはミョウジは全然セーフだよ」
「…え?」
「いや、だから…少なくとも俺は、ミョウジは全然平気だと思うな」
異口同音
みんなが口を揃えて言う言葉でも、君が言うとこんなに嬉しくなるのはなぜだろう。
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細い人に言われると嫌味っぽいけどそれが特別な人だとなんかちょっと嬉しいよねって話(笑)