イナGO
□一粒の優しさ
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(うっ…)
机に突っ伏しながら、先生の話を右から左へ受け流す。
…あれ、このネタいつのだっけ、結構古い気が…
(ぐあ…っ…)
しかし、そんなことさえ考える隙を与えず、奴は襲ってくる。
…奴って誰だって?
腹 痛 だ。
10分前、休み時間のこと。
体育が終わり、乾いた喉を潤すため私は水道へと走った。
…そこで、少し調子に乗ってしまったんだ。
後先考えずにガブ飲みしてしまったから…
しかし原因はそれだけではないだろう。
次の授業は私の嫌いな教科である。
あの授業は嫌だと考えただけでストレスで胃が…
…ゆえに、現在の状況となる。
「…なあ、お前何してんの?」
…さあ、この腹痛にどうやって立ち向かおうか。
そんなことを考えていれば、隣の席の狩屋くんが話しかけてきたため、少しだけ顔を上げてみた。
「腹痛と戦ってるの」
「…バカじゃねえの」
えええええええなんでええええええ
腹痛と戦ったら悪いのか。
じゃあ一体どうすればいいのよ!
思わず叫びたくなるが、授業中のためそれも叶わない。
しかもこの人、あまり話したことないのに私のこと馬鹿って言った。やってくれるな。
「便所行って来いよ」
「トイレでは解決できない痛みだからここで戦ってるんです」
私のこの腹痛は心を無にしなければ治らないだろう。
しかし、これがなかなか難しいのだ。
「原因なんなの?」
これはもう眠るか、なんて顔を再び突っ伏そうとすれば、再び狩屋くんが質問してきた。
「水とストレス」
「ふーん」
「なんだよその興味のなさそうな返事!」
大きな声は出せないが、こそこそ話の声で出せる最大の音量で抗議する。
「うるせーよ、先生に怒られんだろ」
耳に指を突っ込んで煩いということをアピールしてから、狩屋くんは何やら机の中からポーチを取り出した。
「ホラ」
「…?」
そのポーチから取り出した小さなものを、私の方に差し出してくる。
しかしよくわからずに首を傾げれば、ホラ!ともう一度差し出してきた。
「やる。机に突っ伏してこれ舐めながらなんも考えなければ少しはよくなんじゃねーの」
そういいながら半ば強引に押し付けられた飴玉を受け取り、少し意外に思いながらもありがと、と呟けば狩屋くんはん、と小さく頷いてそっぽを向いてしまった。
一粒の優しさ
ちょっと難アリかもしれないお隣さんですが、良好な関係が築けそうです。
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狩屋は
飴玉を
常備していたら
可愛いな!!
って話。