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□Episode.56
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    「────アリスは絶対に
         護ってみせるから」








儚げにも柔らかな笑みを浮かべるアリアは
今にもどこか遠くへ消えていく様で。






    「…傍に居て守るのと、

     遠くから見守る、は違うわ」






ふと零していたのはそんな言葉。
しかし、マリアは無意識の内のそれを
訂正しようとはせず、漠然としていた
アリアを見つめた。






       「……そうね。」






憂いた様な表情でも、苦し気な
表情でもなく、ただ真っ直ぐに微笑を
浮かべ、はっきりと紡いだ。






    「ところで、あの子は
     来ていないのかしら?」






見たことのない顔つきをしたアリアに
絶句していたマリアは、不意に変わり
元の優しげな笑みと共に問われた言葉に
歯切れの悪い表情をして言う。








     「それが、貴女達を捜す途中
      別れたきりで……」








それにアリアは、暢気にもまあ…、と
わざとらしく漏らした。






























     「どれにしようかな〜っ?」








辺り一面に咲く花畑の上で、様々な
花達を眺め アリスは呟いた。








花を結び合わせ、花冠を作り出すアリスに
小さな影が草むらから現れ近づいていく。






    「?…あっ、




       キツネさんっ!!」






手を止め、満面の笑みでアリスは
近寄ってきた影を呼ぶ。




白色に近い灰色の毛並みをした仔狐は
躊躇いなく 自らアリスへ歩み寄る。






    「げんきだった?


     あっ キツネさん
     またリボンがとれそう!」






腰を下ろした膝元から自分を見上げる
狐の首回りに巻かれた紐へ目を向け
手早くアリスは結び直す。






    「プレゼントしたリボン
     たいせつにしてね?



     またとれそうだったら
     わたしがなおしてあげる!」






それを聞くと、アリスの膝に擦り寄り
そのまま丸くなる狐。






     「ふふ。────♪〜〜」






小さな姿に顔を綻ばせ、花を摘んで
また小さな手を進めていく。



















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