D・W U
□Episode.57
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光一つない、閉ざされた闇の中。
音一つない、遮音された歪な空間。
そこに独り、少女は
ひとつ ひとつと透明な雫を落とす。
「…ぃ。────くるしい、よ」
助けを求めるでもなく、少女は…
アリスはか細く 声を零した。
「くるしい、つらい、かなしい
こわい、いや……
─────イヤっ!!」
音がない世界で、耳を塞ぐ。
漏らした言葉は全て
母であるアリアから教えられた感情=B
それを思い出せば、底から沸き上がる
歪み、離れない、苦痛の…嘆き。
「ぁあ゙ぁぁあああぁああぁぁあ
あぁぁああぁああぁ゙っ!!」
くるしい、かなしい、こわい、つらい
…ゃ、ひとりは────イヤだ…!!
言葉にならない叫びを声が枯れるまで
咽が潰れるまで、啼く。
その姿は 純粋さ無垢さを未だに
纏いながらも、悲痛で……残酷だった。
「うそつき…ウソツキッ!!!」
ぼろぼろと雫を落とす度、自分の中にある
何かも落ちていく様な。
自身を形作る すべてが 消えていく様で。
だけど、嘆く声は止まることを知らない。
声は頭に枯れている。
咽は頭に潰れている。
だけど、泣き叫ぶことしか出来ない。
啼く事で、自分を護っていた。
啼くのを止めたら、自分が消える…
そんな錯覚が襲うから。
─────忘れたらいい。
闇の中でただ一つ
その囁きを聴くまでは。
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