D・W U
□Episode.60
2ページ/5ページ
出会いは、ただの偶然。
けれど…、それは必然。
なあ、アリス。
未だにはっきりと思い出せないんだ。
オレ達は、本当に、あの三日月の夜、
魔界の森の偶然が…始まりだったのか?
もっと前に、違う場所で、必然の出逢いが
始まりだったんじゃないのか?
…今となってはもう、確かめる術すら、無いのだけど。
だって、君はもう…─────
この世には、居ないのだから。
カシャン……ッ
ボロボロの身体、血塗れた足元、鎖に繋がれた手足……。
自由を奪われた。
家族を奪われた。
世界を奪われた。
キミを奪われた。
死を与えられた。
紅を与えられた。
業を与えられた。
罪を与えられた。
カシャン……ッ
思い出せたのに…
やっと、大切な君を、君の笑顔を…
けれど、なんて、残酷なんだろう。
自分は、捕えられて、身動きも取れずに、じっと待っている。
もう、背負いすぎた。
────遅かった。
君に気づくのが。血に抗うのが。
もう戻りたくても、戻れない。
君の居た時間にも、何も知らずに、背負わずに、笑っていられた昔の自分にも。
憎いんだ、どうしようもなく。
母さんを殺した、あの男が。
同じ血を持った、アイツが。
君の存在しない、この世が。
血に逆らえない、自分にも。
君に会いたい。
名前を呼んで。
私も呼ぶから、君の名前を。
ねえ、キミの名前は なに?
伏せた瞳から、紅が溢れた。
.