D・W U
□Episode.60
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風も吹かない、静かな闇夜。
森に隠れるように建つ、古びた宿屋。
その薄暗い部屋が覗く窓の中
ベッドへ横たわる少女と、暗闇に溶け込む…闇が居た。
雲は静かに流れ、隠れた月が顔を覗かせる。
そしてそれは、闇の姿も強く、浮かび上がらせていく。
窓から差し込む光を浴びて眠る少女、アリス。
そのアリスを見守るように佇む闇…冬夜。
夜はそっとアリスの額から、今は乾いてしまったタオルを取り去り、新しく水を含ませたそれを額へ戻す。
━━━━ギシッ
古びた床板が軋む音が、足を踏み締める度、響いては消える。
窓から離れた、部屋の扉の横へ置かれた椅子へ腰掛けた夜。
椅子から投げ出される足の一歩前まで届く月明かり。
自ら離れ、月光が届かぬ影へ潜むその姿は、まるで…光から逃げている様だった。
「…………、」
椅子の腰掛けに脚を立て、その片膝に顔を埋める。
浮かぶ表情は、未だ窺えないまま。
アリス、君は…オレの全てだった。
オレ達にとって……大切な光
Episode.60
【死神のなみだ】
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