D・W
□Episode.04
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「 だ、れ…? 」
見知らぬ人物を見て呟きながら
無理矢理に重い体を起こすと、その白髪に
蒼眼の少年が亜璃朱に親切にも
手を貸してくれた。
亜璃朱を見て、安心した様な笑みをする
少年が誰なのか…、寝起きで直ぐには
働かない頭を働かして考えても
答えは見つからなかった。
まず、こんな髪色をした少年が
知り合いならば、どこかしら記憶に
残っている…筈。
そのため、亜璃朱は少年を見つめる。
「ははっ、これじゃ
はじめまして≠ゥな?
“白”だよ、アリス」
ニコッと愛想よく笑う少年の右の目元には
小さな『★』の痣のようなモノがある。
「“白”って…、
催眠術を皆に使った…あの?」
「催眠術じゃあ、
ないんだけどねー♪」
亜璃朱は“白”という名で
覚えのあったのを思い出すと、
(そういえば、この人も蒼い眼…。
この声もあの時と同じ……)
…と今更ながら、思っていた。
そう…“白”は、突然亜璃朱の前に現れた
二人の内、一人の少年だ。
教室に現れたときの白の顔はフードを
深く被っていて、認識できなかったが
名前と声を思い出した亜璃朱は、どれも
一致しているのに気づき、目を見開く。
「夢じゃなかったんだ」と。
「ふふ、思い出したぁ?
────僕の名前は“葵”
皆は、“白”って呼ぶから
亜璃朱もそう呼んでね♪」
目の前の少年が葵…否、白だったのと
夢じゃなかった事が
未だに信じられないでいる亜璃朱。
そして亜璃朱は「皆」という単語に
疑問をもっていたが、今は何一つ
頭に入ってこなかった。
「ビックリしたよー。
アリスったら此処に着いた途端
いきなり倒れるんだから…」
「え…、そうなの…?」
そんな亜璃朱に気にせず話をする白に
亜璃朱は止まっていた思考を働かせて
一時的に、考えを捨てた。
「結構眠ってたけど、大丈夫?
しんどくないー?」
白は心配そうに亜璃朱の顔を覗き込む。
「そんなに寝てたの?
…うん。今は大丈夫だよ」
苦笑混じりに白に笑う亜璃朱は自分自身、
心の中で馴染んじゃってるな、と
他人事の様に自分を笑っていた。
「まぁ、無事でよかったよ♪」
微笑む白の後ろで、小さな花が数々飛ぶ
背景の様なものが見えてしまい
亜璃朱は「え!?」と当然驚く。
「あ、ありがとう。…白」
「♪、お礼なら夜に言ってよ♪
ここまで夜が
アリスを運んだんだよーっ」
「夜? “夜”って
白と一緒にいた…?」
亜璃朱は教室での事を思い出しながら
もう一人の眼帯をつけていた人物の事を
躊躇いながら、指し示す。
「うんっ、それが“夜”だよー♪
あ。後で風呂場まで案内するね」
愛想のいい笑みを、変わらず浮かべて
今まで眠っていた亜璃朱に
気の利いた言葉をかける白。
「 うん。ありがとう 」
つられる様に亜璃朱も微笑して
素直に礼を紡いだ。
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