D・W

□Episode.04
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   「…白も他の奴等も
    オレのことを“夜”って呼ぶが、

    名前は…、“冬夜”だ。

    まぁ、夜でもいい。
    ────よろしく、アリス」





サクサクと自己紹介を無表情で進めていく
夜に、少々圧倒され気味の亜璃朱。






    「よろしく…。冬夜」





亜璃朱は慣れないせいか、
小さく笑って応えた。

夜は“冬夜”と呼ばれたことに一瞬
目を見開いたが直ぐに微笑し直す。




     「……ああ。 それと、ん。」





夜は自身が着ている上着のポケットに
手を伸ばすと、手に握った物を
亜璃朱に手渡した。





      「 あ…。 」





それは此処へ来る前、夜にいつの間にか
盗られていた名前も知らない花の、
亜璃朱にとって、
とても大切なネックレスだった。






    「悪かった。
     大切な物を奪ったりして…」





   「…ううん、大丈夫。
    こうして返してくれたから」






申し訳なさそうに目を伏せて謝る夜に、
亜璃朱は苦笑混じりに言う。


その手には、しっかりと花の首飾りを
大切そうに握りしめて。








    「……“Dream flower”」







     「────え…?」






静かに呟かれた言葉に、視線を首飾りから
外して、亜璃朱は夜に目を向ける。

夜の表情は、暗く陰っていた。
ほんの一瞬の事であったが。






    「その花の名だ。


     …“Dream flower”
     <夢見花>とも呼ばれている。


     込められた意味は数多くあるが
     今、オレが知っているのは


      『希望』『癒し』
     ……『終らぬ夢』


     名も知られる事のない
     珍しい花だと聞く」






     「( あ… )」







────『返すついでに
     この花の謎も教えてやる』






   (ああ、そっか…。
   約束≠守ってくれたんだ)





亜璃朱は、此処へ来る前の夜の言葉を
思い返して、首飾りを眺めながら
小さく微笑む。







    「…ねぇ、夜。
     どうして、私を此処へ?


     …アナタ達が“悪魔”って
     どういう事なの…?」




首飾りを見つめ、亜璃朱は夜に
問いかける。白の事も含めて。






    「!……此処へ連れてきたのは
     オレ達には、どうしても
     アリスの“能”とアリス自身が
     必要だったからだ。」





    「“能(チカラ)”って…?
     私、そんなモノ持ってない…」





夜が告げた言葉を、否定するが何処か
心当たりがあった亜璃朱は、言った後に
直ぐ様、夜の目を逸らす。






    「おまえが持つ“能”は、
     普通 人が持つべき
     モノじゃない能力だ…。


     …続きは、まだ言えない」





真っ直ぐと、亜璃朱の眼を見て話す夜に
亜璃朱は戸惑いながらも、真剣に
聞いていたが、夜は決して
続きを話そうとはしない。






    「そう…。これ、ありがとう。


     それじゃ、おやすみなさい」





その場から、立ち去ろうと亜璃朱は、白に
教えてもらった新しい自室へと向かうため
早足で夜の真横を通る。






   「…アリス。明日、オレの仲間に
    会ってもらってもいいか?」





立ち去ろうとする亜璃朱に、夜は亜璃朱の
方を向かず、話し出す。






     「 ……うん。 」







    「────それと…、」





今度こそ立ち去ろうとする亜璃朱を
またも夜の声がそれを止める。







    「……オレ達はお前の知る、


    『イタズラが
     大好きな妖精さん』だよ」






夜は静かに亜璃朱へ振り返ると
意味深に微笑う。











     「 おやすみ 」






その一言を亜璃朱に残し、そして夜は
静かに足音を響かせて立ち去る。







     「なんで……」






亜璃朱はただ茫然と、その姿が
見えなくなるまで見つめていた。

















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