D・W
□Episode.07
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何かが当たる音が鳴ると共に、誰かが
亜璃朱の名を呼んだ。
「え…────?」
声が静かすぎる部屋に響き、思わず
ビクッと肩を揺らす亜璃朱は、驚いたと
同時に、いつの間にか自分がその部屋に
入っていたことに気づく。
暗い部屋の中を、目を凝らし
よく見ると…─────
─────誰か、居る?
窓から入る月明かりのお陰で、壁際にある
椅子に腰掛けた人影が、そこに
在るのを見つける。
「────冬夜?」
自分の名を呼んだ聞き覚えのある声と
影の形を頼りに、亜璃朱は人影を見つめ
躊躇いがちに問う。
亜璃朱が聞き返すと、丁度月がその人影を
明るく照らし出す。
すると現れたのは、見覚えのある
黒髪でなく、月明かりに輝く…金髪。
その人影の表情は驚いているのが窺え、
そして左目は髪で隠れているために
あまり見えないが、その月明かりに
照らされた顔は紛れもなく、夜こと
冬夜のものだった。
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