D・W

□Episode.10
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     Episode.10
     【能-チカラ-の存在】




















「……どういう事だ…?

何故,彼奴等は“人”の形をしている…?」


「あぁ…。“人型”に化ける
【下級魔族】だろうか…?」



夜達を囲む滅魔使(エクソシスト)達は
夜たちの姿をを見て怪訝そうな面持ちで
呟くようにお互いコソコソと話していた。




「ふふ、僕たちが
“下級魔族”だって。颯♪」


「聞こえた、聞こえた♪」



それ等、滅魔使たちの小さな会話が
嫌でも耳に入ってくるのに
お互いに視線を合わせて、
小さく笑うのは白と颯だ。



 ジャリッ

「何が可笑しい!!?」



そこに滅魔使たちの中に居た一人の
大男が一歩前に出て、笑う白と颯に
向け叫ぶと地を蹴り走り出した。
その大男が走るを合図に、他の者達も
白と颯に向け一斉に走り出す。



そんな事が起きる少し前、夜は颯と白に
呟くように言っていた。





「暴れてもいい。が、絶対に殺すなよ。
“今回は”アリスも居ることだしな…」


眼を細めて、夜は横目で眺めるように
黒と共に岩影に隠れて、今は眠らされている
亜璃朱を見据える。



その夜の命令とも捉えられる言葉に
颯と白は横目にそれを見て、了解、と
意を込めて小さく笑った。



そんな無言とも言える会話が
今までの数秒にあった。



  そして、


走ってくる目立つ大男と滅魔使たちに
白は小さく笑い、




「だって、君たちが僕らの事、

なーんにも判ってないから……」




━━━…だよ♪


途中で途切れたかと思えば
気づくとそれは自分達の後ろから
続きが聞こえていた。



  『──!!!』



次の瞬間、目の前に白の姿はなく
いつの間にか自分達の後ろに居た事に
驚き、急いで体勢を後ろに回して
各々に自身の剣を抜いていく滅魔使たち。



だが、それは構えることすら
意味はなかった。



「っ!! な、に…を…!?」


何故なら、白は自分と一番近い距離に
居た二人の滅魔使の男が武器を取るより速く
二人の目前に自身の手を出していたから。

そして、その二人の滅魔使は
茫然としてその場に立ち尽くしていたが、
それは一瞬で、すぐに意識が
無くなったかのように静かに
崩れるようにバタリと倒れる。




 ほんの一瞬の出来事だった──。









「…何が起こったの…?」


目の前の出来事に亜璃朱は青ざめる。



「! アリス目が覚めたの…?」

じっと岩影から静かに眺めていた黒は
突然の亜璃朱の呟く声に微かに目を見開く。

亜璃朱は白に「少しの間」と此処に
着いたときに眠らされていたのだ。



「うん…。まだ頭がぐらぐらするけど…」



そう言った亜璃朱は片手で頭を抱え
辛そうに顔を少し歪めて答えた。



「? どうしたの?黒…」


亜璃朱はふと気づき、黒の表情を見て
つい無意識に尋ねた。


亜璃朱が見たその黒の表情は
ありえないモノを見るかのように
目は見開かれ、その眼は確かに目の前の
亜璃朱を捉えていた。



「!…、…何でもない…」


亜璃朱の声にはっと気がつくと、
黒は静かに亜璃朱から目を逸らして
ボソリと呟いた。


 「?」

亜璃朱は不思議そうに首を傾げて
黒を見つめるが、その表情は附いているため
見えなかった。

黒の隠れた表情は、
驚愕の色に染められていた。













そして、白とその倒れた仲間の二人に
滅魔使たちは、流れるようにゆっくりと
進んでいた時の間にあった異様な光景と
仲間の有り様を見て、動きを止め
呆然と立ち尽くしていた。

滅魔使から見た白は武器を持たず
“手をかざした”だけなのだ。


たったそれだけで、
仲間の二人は目の前で地に伏している。



そして驚愕の色にそまる表情は
それだけでは無かった。

今、目の前で倒れているのは
滅魔使の間でも名の知れていた
強者だったからだ。










「……の…、」

それまで黙り込んでいた黒が
一人言の様に呟く。


「え?」


その声が聞き取れなかった亜璃朱は
聞き返してしまう。そして黒は亜璃朱に
小さい声ながらも話し出した。



「“あれ”が白の【能(チカラ)】だよ。


 “夢を視せる”能力…。」





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