D・W

□Episode.19
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「ははっ、何言ってるんですか。

 俺自身が出向くのは当たり前でしょ」


 だから、気にしないでください


申し訳そうな様子を瞳にうつすガイアに
朝陽はいつもの柔らかい微笑みで笑った。

その笑みに僅かに目を見開いて
ガイアは 薄く笑みを零した。


辺りはその穏やかな空気に
満たされようとしていた。


   ────が、



「───おい、貴様…。

 ガイア様に対して何だ、
 その口の聞き方はッ!!!」



その低く下げられた低音の声によって、
儚くも壊れてしまった。

それに、キョトンと僅かに目を丸くする
朝陽と相変わらず ほっほっほ
と軽く笑っているだけの老師。


その殺気が滲み出る低音の声を出した主は
先程からガイアの後ろで
朝陽を睨むように見据えていた
黒に身を包む 騎士のような姿をした女。




「まあまあ。
 そんな事言わないでさ

 キレイな顔が台無しだぜ?



      女騎士さん?」



ニッと挑発するように笑みを深くした
朝陽に、青筋を額に浮かべた、
女騎士は言葉を発することなく
無言で腰に提げていた剣を抜く。




「ほう…。死にたいかクソガキ」

口端をひきつらせながら無理矢理笑う
気の短い女剣士を宥めるように
老師の言葉が紡がれる。




「そうカリカリせんで良かろう


    『女騎士・ミラ』や…」


  「そうですよ、ミラ」



ガイアは老師の言葉に続き静かに制止する。




「例え、老師様やガイア様の
 お言葉が掛かろうとも


 このクソガ…、この男には
 一度痛い目に遭わすべきですので」




そう言いながらも、やはり主の命令に
逆らえないのか、『ミラ』と呼ばれた
“女騎士”は剣を抜く手に力が入らない。


ゆえに、ガチガチと怒りに手が震えて
金属が擦れる音が鳴っていた。





 「痛い目なら、既に
  こ奴は遭っておるがの」


老師が漏らした言葉にこの聖堂に沈黙の
空気が少しばかりか流れる。



「ッチ…。斬る気が失せました」


そう言って舌打ちをしながら
ミラは剣をしまった。








「少しばかり遅くなりましたが
 本題に入りましょう…。」



  此処へ呼んだのは
 他でもない、“悪魔”の事です。





そのガイアが纏う空気が変わったことに
朝陽もミラも老師も黙りこみ、
話に耳を傾けた。





「詳しくは視えませんでしたが…
 未確認の悪魔の集団が現れます。」




   「「───!!?」」



驚愕といった様子で朝陽と
老師は目を見張った。




「視たのじゃな…。【先視】で」



『先視』、その老師の言葉に
静かに頷くガイア。




「いつかは分からない。

 けど、遅かれ早かれ
 “必ず”現れる。か…」



手を顎に添えて呟いた朝陽。



「はい。詳しく視れないなど
 今まで、有りませんでしたので
 お二人を呼んだのです」




「ふむ。…階級は解るかの?」



 「はい。恐らく、

  上級、中級ばかりかと」





 「───ははっ。面倒だな」



乾いた笑いを漏らした朝陽に
ミラは眉を潜めて口をはさもうとしたが
朝陽の瞳に宿ったモノを見て
言葉を飲み込んだ。




「取敢えず、潰せばいいよな…?

     “俺等”だけで…さ。」



その瞳には憎悪が宿っていた。
それを見てしまったミラは
微かだが、身を竦める。





「…気を付けてください
     彼らは強大です。

  それに、あの者達も
  動きますよ…。絶対に」



布越しに見たガイアの瞳は
真剣さと哀しさが見え隠れしていた。




「…その前に俺等がその得体の知れない
     奴等を消してやるさ。」




その場から立ち去っていく
朝陽の紅い眼は妖しく光り、そして
口元には深く挑戦的な
笑みだけが刻まれていた。








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