D・W
□Episode.24
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「───もう限界だ…」
何が、なんて言葉は今のこの圧される
空気に訊ける筈がなかった。
いや、先程もずっと、感じていた。
だが“今”纏う夜の空気は、
けた違いなものだ。
「…“お前達”がオレの制御を
壊したんだ。だから、」
後悔するなよ?
夜は痣が一層濃くなった左目に触れて
悪魔の恐怖に染まっていく顔を睨む。
『あ、ああ…、くる…なッ』
ゆっくりと静かに、歩み寄ってくる
夜に、後ずさり恐怖を顔に一層と張り付けて
悪魔は懇願するかの様に、声を震わせる。
「…もう遅いよ。」
────お前は もう
堕ちてしまったから。
だから、もう“遅い”んだ…。
ザンッッッ!!!!
切り裂かれる音が木霊した。
『ア、ア゙ア…ッ』
次第に身体が灰になっていく悪魔を
夜は真っ直ぐに見据える。
悪魔も夜の瞳から、決して眼を離さない。
───『ナァ、知ってるかッ!?』
───『堕ちたヤツを処刑する
死神が涙を流すってヤツ!』
消えていく身体の事ではなく
悪魔はただ、前に一度聞いたことが
ある話を思い出していた。
───『ナンダァ?それ。
『死神』が涙なんか流すかよ』
───『実際の目撃談だゼッ!?』
────『どうせ、返り血が
涙に見えた。とか、そんなのダロ』
────ああ、もしかしたら
その『死神』ってのは
アンタだったのかもナァ…
悪魔は夜を見つめたまま、小さく
笑みを零す。安心感に包まれた様な
そんな笑みを…。
悪魔は完全に全身が灰になり
風に流されていく。
夜は悪魔の姿から目を離さずに
今は、土の塊しかない地面を見つめていた。
その瞳の奥には、微かな“哀しさ”が
秘められていた。悪魔の黒い返り血は
目元から垂れていたため、
それは“涙”にも見えた───。
深く深淵へと堕ちてしまった
お前達を闇から光へと救う事は
出来ないけれど、
だけど、どうか
この能で、君達を歪んだ世界から
救えるのなら それでいい。
だから、どうか今は
────ゆっくりとお眠り……。
────to be continued...
穢れた血を洗い流す
静かな雨が天から降り注ぐ
それは、誰かのために
涙を流すことができない
哀れな死の神の代わりに
誰かが流す涙のように───。
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