D・W
□Episode.30
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━━━━みつけたっ!
さっきのお姉ちゃん!!
Episode.30
【迷子の幼心は】
「(……は?)」
先程までは大分距離があったというのに
今はもう目の前まで突進するかの如く
自分のもとへと走ってきた幼女に
夜は ただ焦りを表情に浮かばせながら
少女のその必死さが窺われる顔に
つい圧されてしまい少し後ずさる。
「あのね、あのね!
さっきお姉ちゃん
カナを助けてくれたでしょ!?
ありがとうっ!!」
可愛らしく笑って頭を下げる
少女…『カナ』を見て
夜は顔色を変えて、薄く笑みを浮かべると
「…どういたしまして。
それと、オレは
“お姉ちゃん”じゃないよ。」
そのふと困ったような苦笑をして
意味深な言葉を呟いた夜に、カナは
訳がわからず頭に疑問符を浮かべる。
夜はカナの目線に合うように
屈んだ腰を上げて、
「じゃあ、気を付けてな。」
カナの頭を撫で、一言告げるとカナに
背を向け その場を後にした。
━━━━クンッ
否。詳しくは“しようとしていた”。
何故なら、それをカナが
引き止めたからだ。
「…どうした?」
カナは頭を撫で終えた夜の
左手を掴んだまま離さず
ただ黙り込んで夜の瞳を真っ直ぐに
見つめた。
「あのね…、」
そのカナの大きな瞳の奥には
戸惑いの色が見えたのを
夜は気づいてしまう。
まさか…と夜はどこか焦り顔で
カナを見つめ返した。
「“迷子”になったのか…?」
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