D・W
□Episode.30
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カツン…━━━━
「『またね』か……」
────“また”なんてのは
もう二度と無いさ。
小さく零した言葉は静かな
人通りのない路地に響いて消えた。
────殺せ。
「ッ…!」
血がオレの内で暴れ狂う。
さっきは危なかった。あのカナという
少女が向かってこなければ
無意識に本能のままに
あの少女の目の前で兄を
消してしまっていたところだ。
────オレは きっと
“自分自身”を保てなかった。
あの驚愕した顔にはこっちが驚かされた。
少女の兄は “オレ”に気づいたんだ。
普通ならば見抜けない姿をしたオレに。
きっと あれは…、階級でいうならば
上級に近い、中級───。
僅かに嘲笑を浮かべ、顔を上げ
アリス達のもとへ帰ろうかと前を向く。
「苦しそうだな。血が騒ぐか?」
ドクンッ
嫌に心臓が跳ねるのが気持ち悪い。
やっと苦しさから解放されると
安堵していたというのに
冷たくなる血が一気に
また熱くなり、内で蠢く。
「………何故…、
おまえが此処に居る」
「血が騒ぐんだよ」
俺も。お前と同じ様に。
「お前が近くに在るって」
勝手に体が動いた。
「血がお前のもとへ導いた」
俺とお前の内に流れる
彼奴の血が。
同じ血族を求めて。
そう言って オレと距離をあけて佇む
滅魔使(エクソシスト)最強と
云われる青年…。
朝陽────。
────to be continued...
運命、宿命、偶然、必然
身の内に流れる血の導き…。
それら全てが重なり
再び合わさる二つの関係。
偶然?必然?はたまた運命か?
果して どれが
この引き合わせに
当てはまるのだろう───。
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