Extra
□LIE STORY
2ページ/4ページ
「────元気だなー。」
聞こえてくる騒がしい声。
目を木から離さずに、言葉を零す。
「朝陽さん。この飾りは
ここで宜しいですか?」
真正面にある大きな木越しで
自分の名を呼び、問いかけてきた声に
朝陽は、上半身を真横に傾け
声の主が示す場所に目を向けた。
「んー。もう少し上の方で」
朝陽は問われた場所より数センチ離れた
何本にも別れた上の枝に指を差す。
それに応えるよう、ルイは朝陽が差した
場所に、赤く丸い飾りが垂れ下がった
紐を枝に上手く吊るした。
「皆、ルイさんを見習ってくれたら
有難いんだけどなー…」
短く溜め息をついた朝陽に
謙遜の声を苦笑混じりに返すルイ。
今、真面目にクリスマスパーティーの
作業に取り組んでいるのは
朝陽とルイ、そして晴輝だけだ。
他は 好き勝手に走り回るものも居れば
無関心に寛ぐ者も、そして嫌々
作業に没頭するものも居た。
勿論、我関せずとこの場にすら居ない
中年オヤジ(朝陽曰く)も。
・
・
・
・
・
何だかんだで騒がしくも、作業は
真面目に取り組んでいた者 数名により
予定とは異なり、遅くも無事終わった。
言わずとも、勿論
準備を一切手伝わなかった者は
晴樹から 極上の罰という名の説教が
贈られたなどは、また別の話。
━━━━ガチャ
「────ほっほっほ
ホワイト
メリークリスマスじゃのぅ」
愉快に笑いながら、パーティー会場と
なった場に足を踏入れた人物。
「お。じーさん
遅かった、な………?!」
老人の声にいち早く気づいた朝陽は
扉の方へ振り返ると、
目にした老人の姿を見て唖然とした。
それは、この場に居た全ての者にも同じ。
「え…、サンタクロース…?」
その場にいた者 全員に代わって
疑問を零した颯。
「そうじゃよ。
クリスマスだからのぅ」
似合うかの?
と楽しそうに尋ねる老人一人。
皆は、始めは驚いたものの
直ぐに慣れると、似合うと褒め称える。
「────あぁ、
忘れるとこじゃった」
その言葉が紡がれると、皆 何だと
疑問符を浮かべた。
老師は肩に背負っていた
大きな白い袋を取り出す。
「儂からのプレゼントじゃよ」
袋から取り出されたのは、
綺麗な用紙に包装され
赤いリボンで飾られた大きな箱。
何が入っているかは分からないため
一部の者は、歓喜の声を上げた。
だが、箱の中身は皆目見当がついていた。
何故なら、箱からは 甘い匂いが
漏れていたからだ。
「甘い香りがするー♪」
「ぅげ。まさか、ケーキ?」
目を瞑って、漂う香りを堪能する白と
箱を凝視しながら、苦々しい表情を
露にするジン。
「老師、この箱を開けても…」
晴樹は箱から老師に視線を移したが
老師が立っていた場所には
もう、その姿はない。
誰もが その神出鬼没さに
ある意味 感心の声を零す。
「おっ!でかいケーキだな〜」
「摘まみ食いはするなよ?」
目を輝かせる颯と白に、朝陽は苦笑して
注意の言葉を投げ掛ける。
大きく美味しそうなケーキを前にして、
若干 興奮気味な二人には
届いていないだろうが。
「取り敢えず、人数分に
切り分けましょうか」
既に切り分けるために準備をするルイの
正確な対応に、朝陽と晴樹も頷く。
「────出来ました」
手際よく切り分け終えたルイの言葉を
聞いて、待ち遠しく
目を輝かせたままだった颯と白が、
一人一人 皿に乗ったケーキを自身の元へ
配られたと同時にケーキを
一口 口に運んだ。
「おいしいーっ♪」
「うめ〜〜!!」
二人の声は、ほぼ同時に発せられた。
周りの者達は その光景を眺めながら
二人と同じようにケーキを口に運んだ。
ジンは、甘いケーキは嫌いだ。と
言いながらも、一口食べると美味しい、
信じられないと言った表情をしながら
食べていた。
今回、ケーキを食べなかった者は
まず始めから準備すら参加しなかった
甘いもの嫌いの真輝斗と
何処へ行ったのか…、この場に居ない
狡牙だけだ。
*****************
「さて、最後は
プレゼント交換≠セよな?」
_