D・W U

□Episode.44
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      「────……?」







黒には…否。ウィルにも、何が起きたのか
全く 理解できなかった。








     「今…、何をしたのか
      説明してもらおうか…?」









ピタリと動きを止めたウィルは
信じがたい瞬間を目の前で見た二人は
互いを、怪しむように見つめる。






ウィルは、元々 黒の能だから
自らで消したのだろうと推測するが
何故だか 違和感が募っていく。












     「 ………… 」







一方、黒は原因の元を、既に知ったが
決して口には出さない。











    「ま。どうでもいいかな?



     今は=cだけど。」








意味深に呟くと、大分空いていた距離を
一瞬で詰めるウィル。

黒は反応する間もなく、
自身の脇腹を蹴り上げられる。









     「────やめて…!!」








口元を押さえ、悲痛の声を上げる亜璃朱。

だが、棺の中からの声は 造り出した
黒にすら届くことはない。

















      ビュオォォ…━━━━







絶壁を越え、その先の見えない下へ
落とされている黒は、自身の
首元を強く押さえられているため
身動きできないでいた。


背中に押し寄せるのは、重い風圧。
物凄い速さで 落ちていく黒とウィルに
深く辺りを覆っていた霧が飛ばされていく。












     「……っ、放し…てっ」







     「…なら、降参すれば?


      ま。助けてあげないけどさ」









風を切るように体を翻しながら
ウィルは、小さく嘲笑を零す。





今まで霧に隠れ、見えなかった下には
暗く淀んで見える海が広がっていた。









      スゥ…━━━━━







突如、サラリと砂が流れるように
音もなく、姿を消した黒。








      「 ……!! 」







同時に、辺りの景色がガラリと変わる。



僅かに目を見開き、周りを見回すと
この場には居なかった筈の、亜璃朱が
入っている棺が
透明の正方形の上に堂々と在った。







    「────黒兎の本質=c。



    幻を具現化する能≠セっけ?」









溜め息を吐き出して、ウィルは
背中越しに、後ろで四角い箱の上に
立っている黒に視線を向ける。



いつの間にか、黒たちの周りには
そこかしこに足場となる四角い箱が
沢山と浮かんでいた。











    「ま…。キミには足場が
     必要だろうし…?仕方ないか」








そう言うウィルには、一切足場などなく
ただ不可思議にも 水面の上で
沈むことなく、佇んでいるだけだ。











    「思ったより楽しめたけどさ…

      やっぱり キミは


          ツマラナイね?」









     「………。 っ!?」







ぽつりと呟いたウィルの言葉にも
反応を一切返すことなく
黒は攻撃を仕掛けようと構えるが
それは、一時止まってしまう。








     ━━━━ドプンッ






何か重たいものが、水に沈むような…
そんな音が黒の耳に響く。








    「これ≠ナ、
     キミを沈めてあげようか…?」








僅かに口角を上げたウィルが腕を軽く
上に振ると、一部の海水が
ウィルの動きと一緒に宙に浮かぶ。

つまりこれ≠ニは、正しく
ウィル自身が今操っているであろう
水の事以外、他ならない。










     「…ッ────!!」







水を操るウィルの姿に
驚愕の色を僅かに表す黒。

















     「さぁ…、逃げられるかな?」








ハッと気づいた時には、時既に遅し


視界を通り抜けた場所を 目で辿る黒は
目を見開き、ウィルに勢いよく振り向く。







        クス……







妖しく歪んだ笑みが
嫌に瞳の奥に、焼きついた。





















     「────オヤスミ?」











        ゴポ…ッ━━━━━




























     ────to be continued...
























     黒兎が瞳に映したのは
     自身を写し出す 水の鏡



     水面が映したのは
     滑稽に歪む真っ黒な兎の姿


















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