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□Episode.47
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カァ カァ カァ
三羽の鴉がある一辺を中心に飛び交う。
其処は庭のようで、二つ椅子が円い机を
囲んでいて、その椅子に一人の青年の姿。
その姿は明るい陽が直射しているため
見えづらい。
バサッ━━━━
三羽の内、一羽がその青年の差し出された
腕に、何気なく止まる。
ザッ…
「────……」
一つの影が 青年の姿を捉え、息を
圧し殺すように、そっと近づいていく。
バササッ━━━━!!!
不意に鴉が、向かってくる影に気づき
青年の腕に止まっている鴉を除き、
他二羽が現れた人物に向け 飛ぶ。
陽の近くまで来ていた雲が その眩しさを
覆い隠す。明るすぎた周辺は直ぐに一辺。
薄暗くなっていった。
鴉等は 人物の手前で飛ぶ方向を変え
斜め上へと飛翔していく。
鴉の翼に隠されていた人物の姿は、
鋭い眼差しをした冬夜。
Episode.47
【死神と鴉、紅と金】
━━━━キンッ
未だ夜の姿に気づいていないのか
鴉と戯れながら、読書をする青年。
その首元に静かに添えられた
夜の氷で出来た刃。
後少しで、首に刺さるという距離だったが
いつの間にか 刃の前に出された本が
それを受け止めていたのだ。
夜はそれに、一切驚きを見せない。
「……殺す気?」
青年…ウィルは、夜に振り向かず
羽を大きく広げて威嚇するかの様に
何度も振る鴉を静めているだけ。
「お前の行動によっては、な」
突如 ウィルが持っていた本に突き刺さる
氷がさらりと粉々になり、消えていく。
「本当…、久しぶり?」
椅子の背凭れの頭に、肘を置いて
ウィルは夜の眼帯に手を伸ばす。
「────死神さま?」
抵抗もなく眼帯を取られた夜の左目の
鋭い眼光は、薄く笑みを浮かべたウィルを
確りと捕えていた。
「…あれ? 怒らないんだ?」
夜の左目から取った眼帯に
目を向けながら、ウィルは少しだが
拍子抜けの声を漏らす。
お互いの目が合うと、不意に金色である
ウィルの瞳が、奥から広がる様に
紅くなっていく。
が、直ぐにウィルが逸らし、鴉に視線を
向けたことで、直ぐに元の色に戻った。
「 何か用かな? 」
「…あの子に、何か余計な事を
話してないだろうな?」
静かに目を細める夜。
「あの子?…ああ。お嬢さんの事?
勿論、言ってないよ?
…ところでさ、キミ達は何で
あのお嬢さんの事を────」
アリス≠ニ呼んでいるのかな?
「!……何が、言いたい」
冷徹な表情を一瞬にして変える夜。
そんな夜からの視線を浴びていながら
ウィルは飄々としたまま、氷に貫かれ
中を読むことが出来ない本の頁を
笑みを浮かべ、静かに捲っていく。
「何が言いたい、か。
…本気で言ってたりする?
オレは、こう言いたいんだよ?」
パタンと軽い音を立て、
本を閉じたウィル。その目線は本から
夜の瞳へ、ゆっくりと移される。
「あのお嬢さんは
アリス≠ナはないのに
何故、キミ達は あの子を
その名で呼んでいる?」
飄々としたウィルの瞳が、不意に鋭くなり
目を見開いた夜を映していた。
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