D・W U

□Episode.47
1ページ/4ページ











     カァ カァ カァ






三羽の鴉がある一辺を中心に飛び交う。

其処は庭のようで、二つ椅子が円い机を
囲んでいて、その椅子に一人の青年の姿。

その姿は明るい陽が直射しているため
見えづらい。







       バサッ━━━━






三羽の内、一羽がその青年の差し出された
腕に、何気なく止まる。









       ザッ…



     「────……」




一つの影が 青年の姿を捉え、息を
圧し殺すように、そっと近づいていく。













      バササッ━━━━!!!







不意に鴉が、向かってくる影に気づき
青年の腕に止まっている鴉を除き、
他二羽が現れた人物に向け 飛ぶ。



陽の近くまで来ていた雲が その眩しさを
覆い隠す。明るすぎた周辺は直ぐに一辺。
薄暗くなっていった。



鴉等は 人物の手前で飛ぶ方向を変え
斜め上へと飛翔していく。

鴉の翼に隠されていた人物の姿は、
鋭い眼差しをした冬夜。




















    Episode.47
    【死神と鴉、紅と金】





















     ━━━━キンッ





未だ夜の姿に気づいていないのか
鴉と戯れながら、読書をする青年。


その首元に静かに添えられた
夜の氷で出来た刃。

後少しで、首に刺さるという距離だったが
いつの間にか 刃の前に出された本が
それを受け止めていたのだ。


夜はそれに、一切驚きを見せない。







     「……殺す気?」






青年…ウィルは、夜に振り向かず
羽を大きく広げて威嚇するかの様に
何度も振る鴉を静めているだけ。







    「お前の行動によっては、な」







突如 ウィルが持っていた本に突き刺さる
氷がさらりと粉々になり、消えていく。








     「本当…、久しぶり?」






椅子の背凭れの頭に、肘を置いて
ウィルは夜の眼帯に手を伸ばす。







     「────死神さま?」







抵抗もなく眼帯を取られた夜の左目の
鋭い眼光は、薄く笑みを浮かべたウィルを
確りと捕えていた。







    「…あれ? 怒らないんだ?」







夜の左目から取った眼帯に
目を向けながら、ウィルは少しだが
拍子抜けの声を漏らす。




お互いの目が合うと、不意に金色である
ウィルの瞳が、奥から広がる様に
紅くなっていく。

が、直ぐにウィルが逸らし、鴉に視線を
向けたことで、直ぐに元の色に戻った。








     「 何か用かな? 」






    「…あの子に、何か余計な事を
     話してないだろうな?」






静かに目を細める夜。







   「あの子?…ああ。お嬢さんの事?

    勿論、言ってないよ?


    …ところでさ、キミ達は何で
    あのお嬢さんの事を────」








   アリス≠ニ呼んでいるのかな?










     「!……何が、言いたい」






冷徹な表情を一瞬にして変える夜。



そんな夜からの視線を浴びていながら
ウィルは飄々としたまま、氷に貫かれ
中を読むことが出来ない本の頁を
笑みを浮かべ、静かに捲っていく。











    「何が言いたい、か。
     …本気で言ってたりする?


     オレは、こう言いたいんだよ?」






パタンと軽い音を立て、
本を閉じたウィル。その目線は本から
夜の瞳へ、ゆっくりと移される。







    「あのお嬢さんは
    アリス≠ナはないのに

     何故、キミ達は あの子を
     その名で呼んでいる?」








飄々としたウィルの瞳が、不意に鋭くなり
目を見開いた夜を映していた。



















.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ