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□Episode.48
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    ────「お母さんは、何処?」








アリスの口から零れた言葉に、マリアや
夜は、微かに悔しげな顔を表して
グッと爪が食い込む程、自身の手を
握り締める。
















    ────アリア…、貴女は……














     貴女が何よりも大切にしてきた
     あの娘が……、


     貴女を呼んでいるのよ…?















目を伏せたマリアの長い睫毛は
ふるふると僅かに揺れている。





















     アリア、貴女は何処に…






         消えてしまったの?

























     Episode.48
     【穏やかな風に消えた嘘】

























     「アリス、あの人≠ヘ…、」





     「────…違う。」






掴んでいた夜の腕から 静かに離れ
アリスは呟く。


それに夜やマリア達の動揺は薄まり
地面からアリスへと目を移す。

今も堂々と 椅子に座り、
机に肘を立てて傍観していたウィルは
飽きたのか、まだ残っていた鴉と戯れる。












    「お母さんは、……死んだんだ」






特に悲しさを含んだような様子ではなく
解けない難題を、納得した小さな
子供のような瞳の色。



そんな純粋な瞳から 紡がれた一言に
目を見開く夜たち。








    「あ…っ、そう!
     黒がさっき怪我をして、
     その傷から血が、流れ…!」







慌てた様子で振り返ったアリスの視線と
合ったのは、皆を追いかけてきた黒の姿。



その事で やっと夜は、黒の存在に気づき
安否を静かに尋ねたところ 黒自身は
大丈夫、と ただ一言答えた。









    「く、ろ? ……紫色の瞳…?



     あれ…? でも黒は、たしか

     綺麗な茜色の瞳をして、て…」








     「!! アリス…?!」







黒を見つめ、呟くように口を動かしていた
アリスが突然 頭を押さえ、地面に
前屈みに座りこむ。



予想外の事に驚いた夜は、目を見開く。

それは同様 黒も、そして
黒をよく知っているマリアたちも。





       「へぇ……?」





そんな中、興味深そうに零したウィルの
声は 鴉以外、誰にも届いていない。








    「何故、それを知ってるんだ?
     黒の瞳の事や、母親の事を」





    「……思い出したんじゃ、」






颯が冷や汗を流し、躊躇しがちに呟く。


アリスは未だ 苦し気に目を強く瞑り
頭を抱えている。

その姿はまるで何か≠
閉ざしているようにも見えた。







       「…………」






ずっと口を閉ざしていた白は、
急にアリスと夜の元へ走り出す。




       「 白…? 」




隣に居た黒は 白がとった突然の行動に
目を見張り、目で白の後を追う。


















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