D・W U
□Episode.49
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「おじさん…?」
肩に体験を背負い、対峙する狡牙。
一歩も動かず 自分を睨むように
見据えてくる狡牙を、同じく睨むレオ。
「この娘に何か用か。」
唸りながら声を出し、レオは警戒を露に
瑞穂の隣で佇む。
「お前にゃ、関係ねぇ事だ。」
不意に深く息を吐き、煙草の煙を
口から出す狡牙は 短くなってきた煙草を
地面に落とす。
「────来い。
晴樹が深傷を負って戻った」
「!? 晴樹さんが傷を?!」
冷静に告げられた言葉は、直ぐに瑞穂の
身体を動かせた。
Episode.49
【闇へと沈みゆく心】
「お前、戻れねぇんだろ?
このままじゃあ、
周りに多大な混乱を呼ぶ。
瑞穂の内に留まりたいなら
────化けな、魔獣」
鋭く尖った視線をレオに浴びせ
目の前の獣に恐怖一つ見せない狡牙に
レオは、鼻で嘲笑う。
狡牙が紡いだ一言に、瑞穂は驚愕。
「な、何言って…っ!?」
怒りが隠った目差しを狡牙に向けるが
狡牙は瑞穂を見ず、
ただレオだけを見据えた。
「────良いだろう。」
二つの存在は、交渉に近いものを
確かに成立させる。
そんな中、瑞穂だけが不満気に
眉を潜め続けていた。
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「あんた、人型になれたんだ」
明らかに不機嫌な瑞穂は
刺々しく後ろに着いてくるレオに訊く。
レオは何ら気にせずに、短く応える。
「ほれ。魔獣に渡すなんて
癪だが、俺のを貸してやる」
そう渡したのは、首に提げていた
雪の結晶に似た首飾り。
「此を我に着けろと言うのか」
一層低く声を発するレオに
狡牙は小さく鼻を鳴らす。
「怪しまれない為だ。
それくらい我慢しろ。
そんで、俺様に感謝しな」
そう言い残し、狡牙は堂々と、皆が
集まっている場へ足を踏み入れていく。
「(滅魔使の証である首飾りを
魔獣なんかに易々と渡すなんて
一体、何を考えて…)」
狡牙の背を見据え、木の陰に隠れる
瑞穂は 隣の木で同じ様に
身を潜めるレオを睨む。
「誰が認めようと、あたしは
あんたを拒み続ける。」
揺るぎのない瞳で言い切ると
狡牙の後を追い、小走りする瑞穂を見て
レオは、微笑を零す。
「(拒み続ける≠ゥ…。
面白い事を言う。)」
言葉を思い返して、レオは笑みを漏らす。
拒んでいると言うなら
既に我は在(い)ない。
拒んでいる訳がないだろう?
闇(われ)を受け入れたのは
紛れもなく、
お前自身なのだからな────。
レオが浮かべた笑みは、静かに
暗い森の、闇の中へと消えていった。
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