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□Episode.49
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    「これは此処だけの極秘だ。


     絶対に!他には漏らすなよ」







念を押して言う狡牙の声が響き渡る此処は

朝陽達“黒の聖職者”専用の一室。








    「勿体振らないで
     早く言ってほしいっスねー」






    「まず、こっちが
     教えて貰いてェな。

     何で此所に居るんだクソ餓鬼」






飄々とソファに座るジンの頭を、即座に
掴み取る狡牙の表情は恐ろしい。





     「聞いてないんスか?


      伝わってる筈なんスけど。
      俺の師匠からー」






一時中断と化した会議に参加していた
朝陽達は溜め息をついて、
ジンや狡牙を呆れたように眺めた。







    「あ?テメェの師匠って
     アレか、女騎士だったか?

     んなの 聞いてねェに
     決まってんだろーが。」






そう言うと、ジンの首根っこを掴み
出口へ向かっていくと






    「だからー、今日から
     この“黒の聖職者”に
     加わったんっスよ、俺。」






その一言に、愕然とする狡牙たち。


狡牙は呆気に取られ、口にくわえていた
煙草を床に落としてしまう。






    「あっそ。ま、精々頑張れや。

     会議再開すんぞー」





    「これから、宜しく
     お願いしますね。ジンくん」






あっさりと承諾した狡牙は
元に居た位置に戻っていき、座っていた
梓は嬉しそうに、笑って迎える。





    「レンさん!よろしくっス」






梓に向け笑い返すと、ジンも 梓と
真輝斗の間にある椅子に腰掛けた。






    「順応力が高すぎでしょう…」






そんな二人に対し、深く溜め息を吐く
晴樹であった。








    「本題に戻るが、さっきから
     其所の壁際に居る奴だが…」






極力 レオの事を見ないようにしていた
皆は、狡牙が向けた視線に 目を向ける。







    「ありゃ、魔族だ。

     正確に言やぁ 魔獣だがなァ」






軽々と口に出された言葉は、
皆を驚愕させた。
朝陽や、瑞穂を除いて。




    「そんな事、あっさりと
     言っちゃって大丈夫っスか?」






もう少し 緊張感をもって
言ってほしいっスねー。




呆れたように言う、ジンの言葉は正論だ。

だが 一般な滅魔使らと違い、晴樹達は
さほど驚きはせずとも、疑問が残った。






    「小難しい説明は嫌いなんだよ。
     後、ただの魔獣じゃねェ。


     聞いて驚けー…、
     そいつは“三大魔獣”だ」







一気に驚愕の渦に包まれる一室。

口にした張本人は、笑みを浮かべ
瑞穂は静かに拳を作り、爪が食い込むほど
強く握り締めていた。






     「そんな重大な存在が
      何故、此処に…!?」







椅子から腰を上げ、問う梓を朝陽が
「落ち着け」と宥める。


そして、







    「その証拠に…。レオ、悪いけど
     瞳の色を見せてくれないか?」






レオを見据え、朝陽は苦笑混じりに頼む。






      「────……。」




      サラ…━━━━━






少し朝陽を見据え返すと、言葉に従い
レオは前髪をかき上げ、伏せていた瞼を
ゆっくりと上げていく。








     「「「「!!!!」」」」






開かれた金色に、皆は息を呑む。






    「“三大魔獣”の象徴だ。


     金色の瞳は、

    狼∞獅子∞鴉≠フ

     三体が持つ証だからな」






いつの間にか 煙草を取り出して
狡牙は言う。






    「その内の狼(ウルフ)とは
     あのヴェルバードのですか?」





梓が問えば、「らしいな」と
狡牙は頭を掻き、答えた。






     「じゃあ鴉≠チてのは?」






興味津々に問い掛けたジン。






    「鴉≠セけは、全く情報が
     掴めてねェんだよ。


     ただ“魔界の番人”とだけ
     知られているがなァ」






へー、と頬杖をつくジンは、狡牙が
思い出したように「あ。」と言った
声を聞いて、嬉しそうに机を乗り出す。






     「二つ名として
      滅魔使(おれたち)はヤツを


     不死鳥≠ニ呼んでいる」






     「ふぅん、何でっスか?」






     「お前は質問が多いな。


     絶対に死ぬことはない
      と云われてっからだ。」







「話が逸れたじゃねェか」とジンの頭を
思いっきり殴る狡牙。








    「そんなヤツが此処に居るか…

     外の奴等が噂してる通り
     確かに瑞穂が関係してる」




    「瑞穂、話しても平気か?」





合間に瑞穂を気遣う朝陽を、瑞穂は
いつもと違った様子で笑う。






    「大丈夫だよ。どうせ
     直ぐに知ることになるんだし」






言葉は他人事の様に紡がれ、
笑っているのに、その瞳はどこか
言い知れぬ冷たさを帯びていた。








その様子を横目に見ていた狡牙は、
口から煙草の煙を吐くと、
ゆっくりと口を開く。



















    「……そこに在る獅子は
     瑞穂の内に棲まう闇だ」




















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