D・W U

□Episode.49
1ページ/4ページ










       「おじさん…?」





肩に体験を背負い、対峙する狡牙。


一歩も動かず 自分を睨むように
見据えてくる狡牙を、同じく睨むレオ。






     「この娘に何か用か。」







唸りながら声を出し、レオは警戒を露に
瑞穂の隣で佇む。





    「お前にゃ、関係ねぇ事だ。」





不意に深く息を吐き、煙草の煙を
口から出す狡牙は 短くなってきた煙草を
地面に落とす。







    「────来い。
     晴樹が深傷を負って戻った」






    「!? 晴樹さんが傷を?!」






冷静に告げられた言葉は、直ぐに瑞穂の
身体を動かせた。























     Episode.49
     【闇へと沈みゆく心】




























    「お前、戻れねぇんだろ?

     このままじゃあ、
     周りに多大な混乱を呼ぶ。


     瑞穂の内に留まりたいなら
     ────化けな、魔獣」







鋭く尖った視線をレオに浴びせ
目の前の獣に恐怖一つ見せない狡牙に
レオは、鼻で嘲笑う。


狡牙が紡いだ一言に、瑞穂は驚愕。






    「な、何言って…っ!?」







怒りが隠った目差しを狡牙に向けるが
狡牙は瑞穂を見ず、
ただレオだけを見据えた。








     「────良いだろう。」









二つの存在は、交渉に近いものを
確かに成立させる。




そんな中、瑞穂だけが不満気に
眉を潜め続けていた。














******











     「あんた、人型になれたんだ」






明らかに不機嫌な瑞穂は
刺々しく後ろに着いてくるレオに訊く。
レオは何ら気にせずに、短く応える。







    「ほれ。魔獣に渡すなんて
     癪だが、俺のを貸してやる」







そう渡したのは、首に提げていた
雪の結晶に似た首飾り。







    「此を我に着けろと言うのか」






一層低く声を発するレオに
狡牙は小さく鼻を鳴らす。






    「怪しまれない為だ。
     それくらい我慢しろ。

     そんで、俺様に感謝しな」








そう言い残し、狡牙は堂々と、皆が
集まっている場へ足を踏み入れていく。








    「(滅魔使の証である首飾りを
     魔獣なんかに易々と渡すなんて

     一体、何を考えて…)」







狡牙の背を見据え、木の陰に隠れる
瑞穂は 隣の木で同じ様に
身を潜めるレオを睨む。








    「誰が認めようと、あたしは

     あんたを拒み続ける。」







揺るぎのない瞳で言い切ると
狡牙の後を追い、小走りする瑞穂を見て
レオは、微笑を零す。


















    「(拒み続ける≠ゥ…。
      面白い事を言う。)」







言葉を思い返して、レオは笑みを漏らす。

















     拒んでいると言うなら
     既に我は在(い)ない。







     拒んでいる訳がないだろう?








    闇(われ)を受け入れたのは
    紛れもなく、
    お前自身なのだからな────。

















レオが浮かべた笑みは、静かに
暗い森の、闇の中へと消えていった。
















.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ