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□trick or treat?
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     「ア〜リスッ!」







そんなご機嫌な明るい声が
亜璃朱の名を呼ぶ。












     「ん?なに、颯…わっ!」







部屋の飾りつけをしていた亜璃朱は
そんな呼び声に躊躇なく振り返る。
だが、一瞬にして視界が暗くなったのと
頭にのし掛かる重みに驚いた声をあげた。








    「な…に、帽子?」







その重みに触れて、何かと深く被された
帽子を取り眺める亜璃朱に







   「へへ〜っ、
   “魔女のとんがり帽子”
    なんだってさ!」





それ、アリスの衣装なっ!



得意気に言う颯。
亜璃朱は、何の事だろうと首を傾げたが
瞬時に物事を理解した。











    「あ、ハロウィンの?」







そう問えば、返事代わりに
明るい笑みが返ってくる。









    「でも、“魔族”に
     ハロウィンの行事は…」








    「そんなのは、関係ね〜よ!

    “祭”は何だろーと楽しむのが
     魔族(おれたち)だぜっ?」






親指をたてて、それを自分に差し
満面の笑みを浮かべて
獣の耳と尻尾を生やす颯は言った。






  もちろん 『狼(ウルフ)』である颯の
  獣の耳や尻尾は正真正銘、本物だ。









    「つーわけで、」













   「「「trick or treat!」」」









不意に重なった二つの声。
颯と亜璃朱は、その声の主たちを見た。









    「あ゙! 白黒!!」








   「何それー!セットみたいに
    変な呼び方やめてよっ」






突如 乱入してきたのは
ちょこんと気配もなく現れた

葵こと白と、茜こと黒だった。






颯の呼び方に不服そうな表情を
浮かべた白と黒に、悪い悪い、と
後頭部を掻いて弁解する颯。









     「あれ?白、黒。

      ────その耳は何?」







恐る恐ると指先を、二人に生えている
兎らしい獣の耳を差す亜璃朱に

二人はキョトンと不思議そうに
小首を傾げる。心なしか、その耳も
ピョコッと動いたように見えたのは
亜璃朱だけではないだろう。




亜璃朱の言葉に、今更気づいた颯も
二人の姿に開いた口が塞がらない状態だ。










     「コレのことー?」





言ってることをやっと理解した白は
自分の頭部に生える兎の耳を
軽く引っ張っる。

白の問いを、素直に頷いて応える
亜璃朱と颯に白は
無邪気な笑みで言ったのだ。



















   「うーん、なんかねー







    マリアの作った怪し〜い薬を
    飲んだら、こうなったんだぁ」










白は隣に立つ黒の
白という呼び名に相応しい白い兎耳とは
反対の、同じく呼び名に相応しい
黒い兎耳を触って問題発言したのだ。
















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