Extra

□trick or treat?
2ページ/3ページ










    「…そうなんだ?」








    「何だ〜、そういう事か」








白の軽い説明を聞いた亜璃朱は
意外にもあっさりと理解した。
それに続き、颯も納得した様だ。

亜璃朱の納得の声に、白も満足そうに
返事を返す。











    「で、アリスっ♪




    『trick or treat』

   “お菓子をくれなきゃ
      イジワルするよ!”」








ハロウィンお決まりの台詞を言い
右手を前につき出してお菓子が手に
乗るのを待つ白だが、







   「…それを言うなら


   “お菓子をくれなきゃ
    イタズラするぞ”じゃない?」






    「そうなの?




    まぁ、そんなのはいいやっ!
    お菓子 ちょーだい♪」







苦笑混じりに間違いを教える亜璃朱。
白は無邪気に笑いながらも言い直さず
ただ、ちょーだいと目を輝かせて
お菓子を待っていた。

そんな白に続いて、黒も小声で
『trick or treat』と言って
手を出して待っていた。


その二人の無邪気な姿に亜璃朱は
困り顔で告げる。











    「お菓子は今持ってないの…。



     ごめんね…?」






本当に申し訳なく謝る亜璃朱の姿に
見るからに残念そうに口を尖らす
白だったが、ふと何か違う事を
思い付いたのか、幼い子供がふいに見せる
あの悪戯を思いついたような
笑みを薄く浮かべた。















   「だったら、報復の
   “イタズラ”…してもいいよね?」








     「────へ…っ?」







ニッと悪戯に笑う白に危機感を覚えた
亜璃朱は、一歩後ずさる。

黒も颯も白の意図に気がつき、
止めるどころか手を組む始末。



じりじりと詰め寄る三人に亜璃朱は
後一歩で、もう駄目だ
と汗を流し諦めそうになった。












    ━━━━━バンッ



    「ほーら、子供達ーっ
     美味しいカボチャパイが
     焼けたわよ〜!!」






扉が開く音と、この状況に不釣り合いな
明るい声色。そして一瞬にして
部屋に漂う 甘い匂い。







その扉が開いて、マリアがパイという
今 最も必要としていた“おやつ”を
持って入ってきたことで、
既に白や黒に抱き着かれていた状況が
一変し、白たちは一目散にパイに駆け寄り
亜璃朱は解放された。










    「マリアさん。
     その格好は吸血鬼ですか?」






亜璃朱のいう“その格好”とは
マリアが見に纏っていた服装での言葉。


今のマリアは、黒いマントを着ていて
そして口元には、吸血鬼と判断する
最も重要な牙が生えていた。








    「ふふ、そうよ。

      似合うかしら?」







   「とても似合ってます

   最初はこの衣装、マリアさんが
   着るべきだと思ったんですけど…」






得意げに牙を見せて いつもより
妖艶に微笑むマリアの問いに亜璃朱は
思ったことをそのまま口に出す。









   「あら、とても似合ってるわよ?

    可愛い“見習い魔女”みたい」








優しく微笑むマリアを見て
そう、ですか…?と
亜璃朱は苦笑を零した。




















     「マリア…ッ!!!


      さっきの飲み物に、
      何か入れたな…!?」





     「あ、夜………っ!!?」








ガタンと音をたてて部屋に入ってきた
夜に亜璃朱は、驚いて固まってしまう。









   「あらぁ、何も入れてないわよ?
    いれたのでなく、
   “混ぜた”のよ…!」







最初はおとぼけた風に言うマリアだが
続けざまに、凄いキメ顔で言い放った
言葉に 夜は全力で、
大して変わってないだろ!
と吐き捨てた。










   「だけど、とっても
    可愛らしいわよ?黒猫さん」








     「っ〜〜〜!!」







珍しく悔しそうに歪む夜の姿は
頭部には黒い猫の耳が生えており
そして 怒りを表すかのように
真っ直ぐに逆立つ長い猫の尻尾があった。








    「…ブフーッ!!
     あははははっ!!!


    あの夜に、猫耳と尻尾…!」







堪えていた笑いが一気に吹き出し
笑い続ける颯に、一つの眼がぎらりと
妖しく光る。








    「はははっ、…え───



     ぎゃあああああ!!!」









颯は羞恥と怒りに染まる夜の逆鱗に触れ
哀れにも犠牲になりましたとさ。









   「あ〜あ、ネコさんご立腹だぁ

    颯もバカだよねぇ」






     「…自業自得。」






パイを頬張りながら、
そんな会話があっただなんて
夜と颯は知らないだろう。















    「さあ、まだまだ
     ハロウィンは
     始まったばかりよ〜!」







そう言って、沢山のお菓子を持ってくる
マリアに皆は大興奮だ。

そのお菓子は 殆どがハロウィンを
テーマにしたものばかり。

















    「さて、締めといきましょう」







そのマリアを合図に、皆は自分の
近くにあるグラスを各々取った。
























    『HAPPY Halloween!!!』



























*****************













  「ん〜…。カボチャは
   もう要らないよ…。マリアさん…」








     「“カボチャ”?」







     「マリア、そんなに
      カボチャ料理作ったのか?」









     「え?カボチャは昨晩
      久々に出して以来よ?」











     「アリス、
      何の夢見てるのかなぁ?」






     「すごく、幸せそう…。」








     「どうするんだ?
      もう夜飯出来るぞ〜?」








     「…もう少しだけ
      寝かせてやればいい」








     「そうね、夜の言う通り
      寝かせてあげましょ」










     「何だか、僕も
      眠たくなってきたぁ」






      「わたしも…。」









     「あらあら…、じゃあ
      あなた達も少し眠る?」












      「「…寝ない」」































     『おやすみ、アリス』




































    目が覚めたら、きっと
    違うようでいつも通りな一日










     とても愚かで、儚い







     私の滑稽な夢物語────。



















































trick or treat? 




  〜お菓子をくれないと

      悪戯しちゃうぞ?〜














































 Next.アトガキ
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ