D・W U

□Episode.56
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     「あ〜っ、マリアだぁ!」








現れた存在へ、勢いよく飛びつく
幼いアリス=B


それを受け止め、優しく笑うのは
髪の長いマリア。










    「久しぶり。アリス、アリア」





















     Episode.56
     【しあわせのヨツバ】






















腰辺りに抱き着くアリスの頭を撫でながら
その後ろで微笑むアリアという女性にも
マリアは懐かしむように話し掛けた。








     「ええ。元気そうね」








安心した微笑みを携えて、アリアも
マリアへ歩み寄っていく。


途端にマリアは形のいい眉を潜め
呆れた様な苦笑を浮かべた。






    「家に行っても居ないから
     心配しちゃったじゃない…」






短く溜め息を吐いて言うと、口に
手を当てて くすりと小さく笑うアリア。



すると、嬉しそうにマリアを見上げていた
アリスは思い付いた様に、満面の笑顔を
浮かべて マリアの名を呼ぶ。






    「いまね、おかあさんに
     はなかんむりをつくってたのっ


     マリアにもつくっていい!?」






そう問えば マリアはきょとんとした
顔をして 嬉しそうにアリスと同じ目線に
腰を下げ、微笑む。






     「ありがとう、アリス。


      私にも作ってくれる?」






そう問い返すと、得意気な
返事が返ってきて。


そんな二人の和やかな空気に
アリアは幸せそうに微笑み、見守る。








    「それじゃあ、もっとおくに
     いっぱいおはながあるから
     つくりにいってくるねーっ」






    「あまり奥に行き過ぎちゃ駄目よ


     何かあったら、大声で直ぐに
     私達を呼ぶのよー?」








アリスの子供特有の柔らかさのある頬に
つん、と指を軽く押し当てて言えば
「はーいっ」と同じようにマリアの頬へ
楽し気に指を押し当てるアリス。







奥へと走っていく小さな背中を
微笑んで見送っていると、頭上から
ふふっと柔かな笑い声が響いたため
腰を上げて立ち上がると、案の定
自分に向け笑っていたのはアリアだった。






    「なーに?何が可笑しいの」






眉尻を片方下げるマリアに、アリアは
口に当てていた指を下ろして 小さく
首をゆっくりと横へ振る。






    「心配性ね、マリアは。

     私より母親に向いているわ」






冗談半分に言うアリアを呆れ顔で見つめ
じっと見つめながら、どこか諭す様な
口調でマリアは口を開く。








     「アリスの母親は
      貴女でしょ。アリア」






     「そして貴女の母でも、ね」








間髪入れずに、アリアは少し目を見開いた
マリアに先刻のアリスの様な、得意気な
表情を漏らす。








    「それじゃあ、お母さん?」






      「ふふ、なぁに?」








呆れながらも、冗談で呼んでみれば
嬉しそうに微笑んで、返すアリアの声。






    「家に引き隠っていてなんて
     言わないわ。……でも、
     あまり易々と出掛けないで」






マリアの真剣な眼差しに、微笑んでいた
アリアの顔つきも変わる。






    「アリスと貴女…、いえ。
     アリスは兎も角。アリア、


     貴女は全て≠ノ
     狙われているのよ…!?」








切羽詰まった表情をするマリアを目の前に
アリアは薄く微笑を浮かべ出す。










    「大丈夫よ、マリア。

     心配しないで…─────」


















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