D・W U
□Episode.37
1ページ/5ページ
「♪〜…────」
鼻歌を紡ぎながら、空を仰ぐ一人の少女。
長く伸びる枝から生える、木の葉たちの
隙間から見える晴天────。
少女は 眩しい光に目を細めながらも
空を自由に飛んでいく鳥を見つめる。
歩く道の先など、見ようともしない。
その道の前に、はばかる木があるのにも
勿論気づかず 少女は夢中で
広い空を眺め続ける。
木に衝突するまで後三歩程度。
「────ぶつかるで。」
Episode.37
【杜の護り人】
「………へ?」
突然耳に届いた警告の声に、少女は
無意識に足を止めた。
足を止め、前を見たことで
やっと目の前にある障害物に気がついた
少女は、さほど驚く素振りも見せず
ただ不思議そうに見つめるだけ。
「……誰か居るの…?」
目の前に立ち塞がる木に手をついて
少女は、辺りを見回す。
だが 周りには誰かが居た形跡はなく
ただ風が木々を揺らし、ザワザワと
音が鳴り渡っていた。
そして、気づく。
あんなにも、晴天の空から届いていた光が
大樹たちに遮られ、
辺りが薄暗くなっているということを。
自分が何処にいるのかも判らずに
少女は、不思議そうに周りを見渡す。
「何や、アンタ。…ヒトか?」
ふとすぐ近くで、そんな問いが聞こえ
木の根元辺りに向けていた目を瞬時に
その声の方向に向けた。
_