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□Episode.41
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ザッ━━━━━
「やっと、抜けた…かな?」
膝に手を置いているため
前 屈みになっていた亜璃朱の息は
少しばかり、荒れていた。
「……、(霧が、深い)」
静かに振り返った先は、今まで自分が
歩いてきていた森。先程は道もはっきりと
見えていたというのに、今現在は
道も見えず霧の中。
「…あ。(名前、訊いてない)」
この霧に隠れた森の奥で出会った
髪と瞳の綺麗な緑と、それを多い隠す
ニット帽が印象的な少女の姿を思い出す
亜璃朱は、不意に自分の名は教えたが
彼女の名は訊いていないことに気づく。
「また、会えるかな…?」
思わず、小さな溜め息と
共に零れる一人言。
ギッ━━━━━
不自然にも、亜璃朱の前にある大木が
軋んだ音を立てる。
気づかない亜璃朱は、ただ真っ直ぐと
霧が深い先を見続けていた。
─────クスッ……
小さな小さな笑い声。
それが微かに響くと、亜璃朱へゆっくりと
弧を描いて落ちてきたのは……
艶やかな 黒い羽─────。
「? 羽が、何でここに…」
黒い羽は、鴉のそれを連想させる。
しかし、手に余るそれは
鳥のものとは考え難いものだ。
亜璃朱は手に持つ羽から、視線を
羽が落ちてきたであろう場所へ移す。
「 ───!! 」
目に映るものに、亜璃朱は目を見開く。
「こんにちは。お嬢さん」
Episode.41
【黒き翼、毒牙故に】
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