D・W U
□Episode.44
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────オレはウィル
“魔界の番人”とでも
言っておこうかな?
Episode.44
【偽りを裂く写し鏡-シンジツ-】
「─────……。」
ウィルが唐突に出した言葉に、黒は
目の色を瞬時に変える。
その額には、僅かながら汗を滲ませて。
「ま…、そんな事を知っても
特に問題はないと思うけどね?」
薄く笑みを作るウィルから、一瞬足りとも
目を外すことなく、黒は見据え続ける。
「あのお嬢さんを、狭い棺から
出してあげないのかな?」
「……あれ≠ヘ
アリスを守るための盾…。」
視線で亜璃朱が中に居る棺を差すウィルに
黒は、表情を変えずに淡々と告げていく。
「ふーん…? …そう。」
中の様子が窺えない棺を流し目に
ウィルは小さく呟き、目を細めた。
「取敢えず、キミの力量を
見せてもらおうか…?」
ガッ━━━━!!
「 ッ!? 」
自身の方へ静かに歩み寄って来るウィルに
構えた黒だったが、突然目前にまで
移動していたウィルの姿に、目を見開く
隙すらなく、首元を鷲掴みされてしまう。
「キミって、この程度?
……護るんじゃないんだ?
見せてよ。その覚悟をさ」
至って表情を変えずなウィルは
首元を掴んだまま、軽々と絶壁の先へ
躊躇なく、黒を投げ捨てた。
「ッう…あ、
……フッ────!!」
飛ばされながらも尚、黒は足掻く様に
数十本の刃を、ウィルへ勢いよく飛ばす。
ヒュッ ヒュッ ヒュンッ
自身に向かってくる刃たちを
冷酷さが籠る眼で眺めていたウィルだが、
「そういう悪足掻き…
キライじゃないかもね…?」
妖艶に微笑んだと思えば、突如 地面に
左の掌をつけ、右足を前に左足を
少し後ろへ ぴったりと地面に
隙間なく張るウィル。
既に黒は絶壁の手前で、風の圧力を
減らそうと、体勢を戻そうと試みていた。
「こんな脆い刃じゃ、オレに傷一つ
付けれないと思うけどな…?」
地についた左手を中心に、引き摺るように
右足を、地面の上で回ると勢いに任せ
ウィルは脚を真っ直ぐ横へ伸ばしたまま
逆立ちをし、その場で何回転も高速で回る。
━━━━━スタッ
何とか、崖の一歩手前で着地した
黒はウィルの周りを覆う砂埃に
何事かと目を見張る。
「……でも────、
キミはどうだろう?」
砂埃から顔を出したのは、黒が造り出した
数多くの刃だった。
それらは、黒が投げつけた速度とは
比べられない程に、何倍も速く
自身へと向かってきていたと同時に
その後ろからは、冷たく眼を光らせた
ウィルの姿も。
「────ッ…!!?」
逃げる暇も、考える隙すらもない。
「 黒ーーー!!!! 」
亜璃朱の叫びが、辺りに木霊する。
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