D・W U

□Episode.51
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風もない静かな夜空に浮かぶは、
妖しげな…鈍く光る紅い満月─────。










     「────ッ…は…っ、」








苦し気な吐息が、薄暗い部屋に響く。




頭を預けた枕元を爪が食い込むほどに
強く握り締めながら、自身の喉元を
もう片方の手で押さえては、何度も
寝返りをうち、もがき歪んだ表情を
変えることなく苦しむ女。








     「っ─────!!!」






勢いよく、きつく閉じていた目を開け
上半身を起こすと、口を押さえ咳き込む。






       「ゴホッ…、」






やっとの事で治まった咳に、落ち着きを
取り戻す様に、大きく息を吐いた。



艶めいた紫の髪を乱して、口を
押さえていた手を握り、喉へ当てながら
そのままきつく目を閉じたマリアの
眉間には深く皺が寄っている。



左には、紅い月がマリアを照らし
窓の外から見つめる様に輝いていた。








     「─────……」








異常な程、喉に渇きを覚えていたマリアは
閉じていた目をそっと開けると
大きな満月を一瞥し、ゆっくり
ベットから、身を引き摺る様に降りた。






ふらふらとした足取りで、壁を伝いながら
部屋を出ていくマリアの瞳は
哀しげに揺らめく。



















     Episode.51
     【揺らぐ月と波打つ本能】























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