D・W U
□Episode.55
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「─────‥‥」
目を伏せ、一人思いに耽る冬夜。
不意に凭れ掛かった木が風に揺れ
大きな音を響かせる。
ザァッ…━━━━━
「こんな所で一体
何をしてるんだい?」
同時に頭上から届く陽気な声と、見飽きた
黒い羽根に、夜はぴくりと睫毛を揺らす。
「 ………… 」
「おやおや…。
相当堪えたみたいだね?
アリス(あのこ)が放った
─────大嫌い≠ノ」
くすりと漏らされた笑声に、附せていた
顔を上げ、尻目に頭上の木に座るウィルを
鋭く睨み上げた。
「…ほらね?
冷徹な表情が、言葉一つで
剥がれてしまっているよ?」
心底 嬉しそうに目を細めたウィルは
自分に向けられた、いつもより
鋭い眼差しに笑う。
「…お前に構ってる暇はない」
沸々と滲み出るウィルへの怒りを
隠そうともせず、言い放つと地面に
片手をつく。
「────逃げるんだ?」
腰を上げようとした夜の目前で
軽い音を立て、着地したウィルは
直接 突き刺さる夜の視線を浴びた。
「‥‥‥退け。」
ピリピリと伝わる殺気を素知らぬ振りで
ウィルは、やれやれと肩を竦める。
「オレに当たるのは筋違いだよ?
…少し抑えて。キミの魔力は
色んなものを無闇に
惹きつけてしまうんだから」
そう囁けば、次第に薄まっていく
夜の殺気は 心中では穏やかでない。
クス…━━━━━
「 イイコ。」
Episode.55
【身勝手な自己満足】
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