Gift

□DAYS
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     「あっつい゙〜〜〜っ」








蒸し暑い夏のこと。

蝉たちが個々に違った鳴き声を上げる
昼頃、耐えきれず白が呻いた。




















      ミーン ミ゙ーン






煩い蝉の声が窓辺から風と共に室内へ。


その中で、椅子に凭れながら浮かんだ汗を
垂れ流すのは白。薄く開いた口からは
唸る様な声が度々漏れ出す。





それに同じく、あまりの慣れない暑さに
耐えきれなくなっている颯が腹立ちを
含んだ声を出した。






    「ゔっせぇよォ〜……。


     こっちだって耐えてんだ
     体温あげさせんじゃね〜…」






潤い一つない渇いた声に覇気はなく
ただただ改善されぬ暑さに呻くばかり。


それを見計らい、ふたりと対し
涼しげな顔色をした夜がいつもの様に
静かに口を開いた。








    「我慢しろ。文句を言うな。
     人里より幾倍マシだ。

     この森を出てみろ…
     人口密度の高さに暑いなんて
     戯言は、言ってられない」








他より涼しげで汗が少ない夜でも
流石にこの気温には逆らえない様だ。

眉間には皺が寄っていて、数滴の汗が
骨格を伝い流れ落ちていく。








    「本当、人間界の夏って
     ひどく暑いのねぇ……」






ふぅ…と息を吐いたマリアからも
汗が絶え間なく流れていた。


その言葉に便乗する様に、白が椅子に
張り付いた背を気だるそうに離す。








    「どこか涼みに行こっ!?


     もう限界だよー…。ほら見て

     クロなんて暑さのあまりに
     のびちゃった…っ クロぉ…」








木で出来た長椅子に全身を預けた黒は
瀕死のごとく、ぐったりとした様子で
暑さにやられていて。




白はわざとらしく身体を引き摺る様に
黒へ近寄ると、汗で張り付いた前髪を
払ってやりながら声を零す。





その光景を目にして、流石に
夜は言葉を詰まらせてしまい。
息を漏らしながら、夜は目線を横へ移す。








    「アリスは大丈夫か…?」






     「ん…、へいき……」








視界に映る亜璃朱は、窓際に佇み
外から息吹く風に身を寄せていた。


本人はそう言って微笑むが、言葉には
力はなく、本心が表れている。








    「────では…、
     海へ行っては如何ですか?」








まさに鶴の一声のごとく。
ルイの口から放たれたその単語は
この場の者の心を確実に掴む。



















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