Gift

□雪降る曇天の朝に
2ページ/5ページ











  「え──?!アリス見たの!!?」






ざわめく昼休みの教室。



その中でも、はっきりと耳に届いたのは
亜璃朱さんの友達である
『佐原美樹』さんの心底驚いたような声。






   「うん、見たよ?
   “片目だけ色が違う猫”だよね?」






   「えー!スゴい!!

    流石はアリス、運がいいよね」




佐原さんに、
「だけど、少し色が違うだけだよ」という
親友の亜璃朱さんの言葉は届かず
一人興奮に眼が輝いている佐原さんが
視界の端に映る。





   「(ノート提出、
    きっちり人数分ある)」




あたしは、視界の端に亜璃朱さんの姿を
映したまま、委員の仕事だとかいう
めんど…いや、ノートを集めて、
それを人数分あるかどうか、
昼休み中に数え 教師達のいる職員室へ
一人で運ぶという少し大変な仕事を
早めに済まそうとしていた。






  「その猫に触るとね、
   過去に行けるという噂があるの!」





    「そうなんだ、よく知ってるね」






一方的に語る佐原さんの
相手となっている亜璃朱さんに少しばかり
同情したけど、彼女はちっとも
苦じゃなさそう…それどころか
きちんと相槌をうって一緒に笑っている。



   嫌な顔一つせずに話を聞く
  転校してきて、任務で亜璃朱さんを
   見て気づいたこと。


   そういう包み込む優しいところ
   “あの人”に似ている。




脳裏にあたしの名を呼んで
優しく微笑む 光に包まれた様な
女性の姿が映る。

















   「そりゃ そうよっ
    その猫が“悪魔”の存在を
    証明する鍵だもん!!」






   「(悪魔、ね…。
    あんな奴らの存在



   “あたし達”が滅ぼしてやる)」






熱弁する友達の話を亜璃朱さんは
「そうなんだ」と小首を傾げて
聞いていた。


一応 私も聞く耳をたてておく。
もしその猫が悪魔に繋がってるなら…


…消さなくてはいけないから。









   「アリスだって、過去に
    戻りたいと思わない!?

    過去に行けたら、
   “今”が変わるかもしれないよ?」







   「うーん…、過去かぁ…」



考える素振りを見せる亜璃朱さんに
佐原さんは、満面の笑みで何度も頷く。







    「…過去は変えられない。
     変わってしまってはいけない


     だから、私は、」




   過去に行きたいなんて思わないな






亜璃朱さんの言葉に、佐原さんは
目を見開いて、そっか…と言葉を漏らす。






   「そうだよね!!

    やっぱアリスは
    良いこと言うねー♪」






また違う意味で再燃する佐原に
うん、と笑いかける亜璃朱さんを横目に
あたしはノートの山を持って教室を出た。





















    「(“過去”…)」





相変わらず騒がしい渡り廊下を歩いて
あたしは先程まで聞こえた会話を
思い出す。















   ────そう…。


   “過去は変えられない”んだ









_
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ