Gift

□Good × Evil
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      カツン…━━━━━




     「おい、アンタ。
      …今 何隠した?」



狭い路地裏で、低く放たれた声。

その妖しい眼光は 行き止まりに
道を阻まれ、恐ろしいものを見る目で
立ちすくみ 目の前まで迫ってくる
青年とも少年ともとれる、人物に
ただただ震える。







    「おっ俺ぁ、
     何も隠しちゃいねぇ!
     し、信じてくれ…っ!!」






助けを乞う男は、手を左右に振って
何も持っていないことを示す。

だが、着物の懐から トサッと軽い音を
立てて 何かが地面に落ちた。






     「あ゙ぁっ────」





咄嗟に それを拾い上げようとした
中年男の首に冷たい物が触れる。





      「……阿片か。」





その名を聞くと同時に、男の体は
跳ね上がり、力一杯に叫ぶ。







    「違うんだっ!!
     俺ぁ、頭に頼まれただけで!」





必死に訂正の言葉を投げ掛ける男を
冷めた眼差しで、見据える少年。

その間も少年は 男の首に
触れるか触れないかの距離で刀を持つ。








     「違うでしょ?アンタこそが
      その頭 本人…。」





暗闇から、静かに足音を鳴らして
近づく少女の声に、
男はビクリと肩を震わす。


未だ刀の刃を突きつけられた男と少年は
闇から 薄暗い場所へ、身を晒した少女に
視線を向ける。男は少女の姿が
見えるとなると
一層 表情を強張らせた。


少女の右手には、十字の剣。
左手には、傷だらけになった自身の手下が
捕まっていたのだから。




        ドサッ



     「ぅう…、頭ぁ…
      すいやせん……」




     「この男が吐いてくれた
      今は要らない事まで」







乱暴に、放り投げられ 手下は
地面に伏せながら、唸るように声を零す。

その姿に、頭と思われる男は
茫然と立ち尽くすばかり。






     「さあ、金田組の頭。

      観念したら どう?」






少女の無感情な声が、今の男には
疎ましく思ったのだろう。


頭の男は、懐に手を忍ばせると







     「うああああ!!!」




何処に忍ばせていたのやら
男は懐刀を手に、それを振りかざした。


だが、等に感づいていた二人は
直ぐに構えを取り、一瞬にして…、






       ガキィン!!






       ━━━━ガチャンッ



     「麻薬不法所持で逮捕。」





持っていた小刀は、男の手から弾かれ
そして宙で、
少年によって二つに斬られる。


渇いた音を立てて、地面に落ちた
自身の小刀を目にするや否や
腕に当たる冷たさと無機質な音。







     「な…っ!!!!

      や、止めてくれぇ!!」






頭とその手下は、たった今 この場に
到着した警察官に
連れられることとなった。

警察官二名は、自分達よりも
年下だと言うのに関わらず
少年と少女に敬礼をして、離れていく。






      ジャリ…━━━━━



二つの足音が小さく響いた。


二人は、それらに視線を向ける。






     「真輝斗」「瑞穂」







二人の漏らした声は同時。
お互いの思考を理解し合うと、
二手に別れ、この場を後にした。






















******







    「やっぱり、あんたね。
     逃げてばかりな…白いの。」






先回りした瑞穂の目の前に立ち尽くすのは
白い髪をもつ少年。


行く手を阻まれたというのに
少年は余裕さを含んだ笑みを漏らす。







    「逃げてばっかりなんて
     酷い言い方だなぁ…



     僕は、わざと争い事を
     避けているのにー♪」




少年は、ポケットから薄い青色の髪留めを
取り出す。そして慣れた手つきで
素早く 跳ねた前髪を掬い上げ
前頭部に留める。






     「誰が頼んだ。そんな事」






目を鋭く細め、瑞穂は十字の剣を構えた。

少年は薄く笑みをつくり






     「さあ。誰だろうね?」






前髪で隠れた澄んだ蒼い眼を表し
他人事のように微笑む。






















******






 同時刻─────









    「何で、こんな所に居る?」





眉間に皺を寄せ、真輝斗は
鞘を前へ出すように掴み、
柄に手を添える。






     「………金田の頭の偵察」









       「────!?」






紫色の瞳をもつ少女は静かに明かす。
その一言に、真輝斗は眉を潜めた。















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