ダーリンは芸能人
□JADE event 春 - after story -
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『 かなでが好きだ…… 』
春に告白され、想いが繋がった私達は、海辺でキスを交わし、抱きしめ合っていた。
始めはお互いの想いを伝えあうキスだったが、徐々にお互いの吐息すら奪う激しいキスへと変わっていき……。
(もう……何も考えられない……)
私の思考が霞がかってきた頃、ようやく唇が離された。
「このまま……かなでが欲しい」
耳元で聞こえる、春の熱を帯びた声。
先程のキスで乱れていた呼吸が、鼓動が……。この一言でさらに乱れ、跳ね上がる。
(……私も…このまま……)
私は魔法にかかったように、コクンと頷いた。
その返事と同時に、春がジャケットを脱ぐのが見え……。
(あっ……)
Tシャツの上からでもわかる、適度に筋肉のついた身体。長い腕。
一連の動作に見惚れていると、春は脱いだジャケットを私にかけた。
さっきまで春が来ていたジャケット。まだ残る、彼の温もりに包まれる。
「砂で汚れてしまうから…」
春はそう言って、ゆっくりと砂浜の上に、私を押し倒した……。
覆いかぶさってくる春。
見上げると、春の熱っぽい眼差しと、空に広がる星と輝く月。
全てが幻想のようで、これが現実だと信じられない。
「……春……」
私は手を伸ばして、春の頬に触れる。
「なに……?」
彼は優しく私の手に手を重ね、微笑んだ。
「…夢じゃ……ないよね?」
「ああ……」
現実だというように、彼はゆっくりと唇を重ねた。
「んっ…ハ、ル…」
(やっぱり春が好き)
キスの合間に彼の名前を呼ぶ声は、甘くかすれてしまう。
そんな私の声に応えるかのように、春の指先が首筋から胸元へとおりてきた。
はだけられるシャツ。そして触れる春の指先……。
(あっ……)
素肌が晒されて過敏になっているせいか、春に触れられた場所が、どうしても反応してしまう。
「寒い?」
そんな私の反応に、春は寒いからと思ったらしい。
(違うけど…。春が触るからなんて、恥ずかしくて言えない)
顔と体に熱が集まるのがわかる。
何も言えない私は、ただ黙って首を振った。
「だが…風も出てきたし…。風邪を引かせるわけには…」
(あっ…違っ)
春の体が離れそうな気配がして、慌てて春の腕を掴む。
「違うの。寒いんじゃなくて…あっ…熱いの。春が触れる場所…全てが」
(体が熱くて…どうにかなりそう)
これ以上にないくらい、心臓が高鳴っているのがわかる。
正直な気持ちを言葉にし、その恥ずかしさのあまり目を反らすと、春が微かに笑う声が聞こえた。
(…ハル?)
恐る恐る春を見ると、目の前の彼は、優しく微笑んでいた。
「そうか。なら…もっと熱くさせるから。なにも考えられないように…」
春の長い指が、私の頬を捉え
「俺を溶かしたのは、かなでだから。キミも…もっと俺に溺れて欲しい」
そのまま、春の熱い唇がおりてくる。優しく…そして激しく。
(もう、充分溺れてるよ…)
彼のキスと想いを受け止めながら、私の思考は春へと染め変えられていく。
あの歌のように…。
誰もいない砂浜に響くのは、波の音と二人の息遣いだけ…。
そんな中、私も春に溶かされていくのを感じていた…。