ダーリンは芸能人
□……CM?
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「駄目だ」
「なんで!!」
「絶対に駄目だ」
春の怒った声が、部屋中に響く。
何が春をそんなに怒らせているのかというと…。
女性用下着メーカーたっての希望で、私がイメージキャラに選ばれて……。
そのCM撮影に臨む事になったのだけれど。
(可愛い下着だけど、布の面積が小さいんだよね)
最近、エロカワ下着が流行になっていて、胸の谷間はよりはっきりと、そしてブラは見せてもいいような可愛いデザインになっている。
当然、そのイチオシの下着を身に着けて、撮影しなければならない。
今日渡された撮影用の下着を持ち帰った私は、その話を春にしたのだが。
(反対されるとは思ったけど、こんなに怒るなんて)
目の前の春は、完全にお怒りモード。
「ねぇ…。メーカーさんの希望で私になったから……。断れないよ?」
(若い女性の購買層を、獲得するためって言われたら……)
私は事務所でのやりとりを思い出す。
担当者に是非と言われて、断れるはずがない。
ましてや、自分を売り出すチャンスとなれば、なおさら……。
「かなでは……他の男に、自分の下着姿を晒してもいいのか?」
春の強い眼差しが、私へと向けられる。
「それは……」
「俺は、嫌だ」
そう言うと、春は怒って私に背を向けてしまった。
春の言うことはもっともで。私だって全国ネットのCMで、自分の下着姿を晒すのは抵抗がある。
(だけど……)
今回の事はもう決定事項で、どうにもならないのだ。
「……ねぇ……春」
私は春に近づくと、後ろから彼に抱き着いた。
「私だって嫌だよ。……だけど…今回は仕方ないの…」
春に回した腕に、少しだけ力をこめる。
「春……お願い」
私は彼の背中に顔を寄せて、祈るように呟いた。