ダーリンは芸能人
□ジューンブライド with 春
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今日は新曲のPV撮影の日。
今回の衣装は、淡い色のプリンセスドレス。
なぜドレスかというと……。
新曲は6月に合わせて、ウェディングソングになっていて、ピアノとヴァイオリンが重なる甘いバラードになっている。
プロデュースはもちろん……。
「おはようございます。神堂さん」
「……おはよう、かなで」
人気バンドJADEのボーカルにして、私のプロデューサー兼……恋人の神堂春。
「今日はよろしくお願いします」
春に会えた嬉しさと、今日一日、一緒にいられる喜びを感じて自然と笑顔になる。
「あぁ……よろしく」
そんな私を見て、春はクスリと笑った後、
「そのドレス…よく似合っている」
顔を寄せて、私にだけ聞こえるように言った。
(はっ、春……みんなにバレちゃうよ……)
春の甘い声と、周りのスタッフに気づかれていないかのドキドキで、私の鼓動は自然と早まった。
「……ありがとうございます……」
赤面して照れる私の頭を、ポンポンとする春。
(春は……余裕だな……)
春の一言や何気ない行動で、舞い上がってしまう私。
でも、春はいつものように微笑んでいるだけで……。
(よく、先に好きになった方が負けだっていうけど……)
「……勝てないな……」
「……え?」
(あっ、声に出てた…)
「な、なんでもないです」
慌てて首を振ると、春は少し納得のいっていない顔をした。
「あっ、あの……本当になんでもないんです……」
(こんな場所で、いかに春の事を好きか言うなんて……)
私が誤魔化すような笑顔をすると、
「スタンバイ、お願いしまーす!」
と、いいタイミングでスタッフさんの声がかかった。
「ほら、神堂さん!行きましょ?」
話が中断された事に少しホッとして、春をリハに向かうように促す。
「………じゃあ、また後で」
なおも考えるようにしていた春だったが、慌ただしくなっていくスタッフにつられるようにして、リハへと向かっていった。