ダーリンは芸能人

□A Happy New Year 2013
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「皆さん、あけましておめでとうございます」

年が明けた深夜、私はJADEの楽屋を訪ねていた。

……と言うのも、JADEの皆さんは毎年恒例のカウントダウンライブを行っていて、私はそのサプライズゲストに呼ばれたからで…。

「お、かなでちゃん!あけおめ〜」

「かなでちゃん、お疲れ」

扉を開けて挨拶するとすぐに、JADEのムードメーカーである冬馬さんと、秋羅さんが迎えてくれた。

「皆さん、お疲れ様でした。今回も凄く盛り上がりましたね!」

「だよね!カウントダウンの時なんかは、毎回ウキウキするよな〜」

「冬馬は毎回、はしゃぎ過ぎだって」

少し疲れた様子の秋羅さんと、まだまだ元気そうな冬馬さん。口調はいつも通りなのに、その対照的な様子の二人が何だか面白い。

「でも秋羅さんだって、いつもは見せない興奮した感じでしたよ?」

「おっ、俺をからかう気かな?かなでちゃん」

クスクス笑いながら言う私に、秋羅さんもおどけた感じで返してくれる。

それが何だか、“いつもらしく”なくて、楽しい。

「ちょっ、二人とも!俺を混ぜてくれよ〜」

「何だよ、冬馬」

汗を拭きながら、私達の会話に割って入る冬馬さん。こちらは“いつも”通りで…。

(……楽しいな)

カウントダウンライブの収容人数や規模、ファンの熱気などを間近で見て、改めて遠い世界の人達に感じてしまったが、今こうして接してくれる二人のやり取りに、安堵してしまう。

(まぁでも、私とはレベルの違う、凄い人達なのは間違いないけど)

見せつけられたレベルの違い。自分はまだ及ばないのはわかっている。でも……。いつかこの人達の隣に、胸を張っていられるようになりたい。

愛しい彼。その隣にいる事を、みんなに認めてもらえるように……。


目の前でじゃれ合っている二人を見ながら、今年の決意を固めていると。

「でも正直な話。今年はかなでちゃんが出てくれたから、余計に盛り上がったよ」

ありがとう――と言って、秋羅さんが私の頭に手を置いた。

(えっ…?)

「あ…いえ、私も出させて頂けて、とても楽しかったですから!」

思考を中断させる突然の事に、少しドキッとしてしまい、それを誤魔化すように顔の前で手を振った。

「相変わらず、いい子だねー」

私の反応を面白がっているのか、秋羅さんが頭を優しく撫でてくる。

「あっ…あの……」

(どうしたらいいんだろう…)

返答に困って目を泳がせていると、

「おい、秋羅!いい加減手を離さないと夏輝に怒られるぞ」

いつもは怒られている側の冬馬さんが、助け船を出してくれた。

「いつもセクハラしてる冬馬に言われるとはな…」

「いいだろ、エロ親父は俺の特権なの!」

「特権じゃないだろ。まっ、俺のはかなでちゃんが、からかおうとした仕返しってやつだから」

そう言いながら手を離した秋羅さんが、私にウインクしてきた。

(わ……)

「うぇーー。新年早々、秋羅のウインク見ちゃった。今年の俺の運勢、大丈夫かよ…」

戸惑う私と、別の意味で戸惑う冬馬さん。

「今年はヤバイかもな。とうとうセクハラで捕まるか?」

「ちょっ、秋羅!」

「あっ、冬馬さん!危ない――」

「えっ…」

秋羅さんに掴みかかろうとした冬馬さんが、足元に置いてあった機材に足を……。

「――いっって〜〜!!」

「…ほら、言わんこっちゃない」

「っ、……お前のせいだろ!」

足をさすりながら、文句を言う冬馬さん。

(何だか良い年になりそうだな…)

新年早々の楽しいやり取りを見て、私は良い年の始まりを予感していた。



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