ダーリンは芸能人
□プロローグ
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「あっ、俺、ビンゴ!」
年明け一発目の収録が終わった後、そのスタッフ達が主催してくれた新年会に、Wave全員で顔を出していた。
冠番組に携わるスタッフだけに、気心も知れそれなりに楽しく、終盤になると何故かビンゴ大会が始まって……。
そのビンゴの途中、読み上げられた数字に最後のマスがあいた俺は、特に期待もせず景品交換のために席を立った。
「こちら、景品です」
「ありがとうございまーす」
スタッフから手渡された景品。
なにやら少し大きめの物だが予想以上に軽い。中の物に想像がつかなくて首をかしげると、
「中西さんの景品は、詰め合わせなんですが……開けてからのお楽しみで♪」
と妖しげな笑みで言われた。
さらに「さすが中西さん!引きがいい〜」とか言われて……。なんの引きがいいんだか。
(まっ、いーや…)
適当に笑みを返してメンバーの近くに戻ってくると、先にビンゴしていた翔に話しかけられた。
「京介のは、なんだったんだよ?」
「さぁ?」
「さぁ?って…聞かなかったのか?」
どうやら他の人の中身が気になっているらしい。なんせ翔のは……“犬のぬいぐるみ”だったから。
「俺のは、開けてからのお楽しみだってよ。いいじゃん、翔はぴったりの物が当たったんだから」
「それ、馬鹿にしてるのか?俺がお子様だって!」
頬を膨らませて抗議する翔。
(だから、それがお子様なんだって…)
そうは思ったが、言うとまた面倒なので、ただ「馬鹿にしていない」とだけ言っておく。
それに満足したのか、機嫌を直した翔だったが、
「しっかし、なんで京介のだけ、開けてからのお楽しみなんだ?」
また更にくいついてきた。まったく…。スタッフが何やら意味深に渡すから……。
「だったら、翔が開けていいぜ?」
だんだん面倒になってきて、目の前で瞳をキラキラさせる翔に「ほら」と景品を渡した。
「いいのか?」
嬉しそうに受け取った翔は、嬉々として包装を開けていったが……その中を見ると、突然動きを止めた。
「?……おい、翔?」
明らかに固まっている様子の翔に声をかけるが、返事がない。
「なになに、どーしたの翔?」
俺達の様子を近くで見ていた亮太も声をかけ、翔の近くへと移動すると――
「うわっ、翔!顔真っ赤!!ってか、何コレ!?」
翔の手元を覗き込んで、大爆笑した。
(……?)
そんなに変な物なのか…と溜息をついて、俺も翔の手元を覗き込む。
「ゴーヤ…の……!」
(スタッフも面白いの用意するねー)
思わずニヤリと笑ってしまった。おっと…今は“Waveの中西京介”でいなくちゃ。
「はい、没収〜」
赤面している翔は置いといて、これ以上他の人の目に触れないよう、元の包みに戻す。
「お子様な翔ちゃんには、刺激が強すぎたかな〜?」
爆笑していた亮太が、未だに硬直したままの翔をからかっている。
「うっ、うるさいぞ!亮太!!」
(今のうちに……)
じゃれあっている二人から離れ、急いで携帯を取り出す。
「さて、愛しの彼女の予定はどうかな?」
これを彼女とどう使おうか。その事を考え、その光景を想像しながら、メールを打つ。
しばらくして返ってきた彼女からの内容に、楽しい夜が過ごせそうだと思いながら、“お誘い”の返信をした―――