黒子のバスケ

□BUZZER BEATER
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まるで
小さな頃信じた魔法のように
跳ねては消え
スティールしたと思えばすり抜け
ボールは自在に奴の手の中で踊る。

「高尾くん…だね。」

やけに冷静な声で
赤司は俺の名を呼んだ。

飛びかけの意志で反応すると
やはりそこには不敵な笑み。



"やっべ!"

ドリブルの構えを取った相手に
少しでも早くコースを塞ごうと右足を出す。

だが
それも虚しく、抜き去られる。

そしてそのままドライブイン。
ボールと擦れるネットの音。
沸き上がる観客と
落胆する仲間達の溜め息。


そう、
そこまでが"想像"出来た。


でもそれは
奴のフェイントが見せた幻覚。

確かにドライブはした。
しかし
すぐにフェイダウェイで
スリーを打つモーションに入っていた。

"届け…っ"

左足を軸に
ありったけの力で飛んだ俺は
赤司をボールごと叩き倒していた。

「っ…!!悪い!大丈夫か?!」

とっさに
乗り掛かった身体を退けると
打ち所が悪かったのだろう。
自身の髪色と同じような赤を顔に乗せた
赤司の微笑があった。

「高尾くん。もう、たっぷり夢は見ただろう?」

背筋を凍らせるような冷気がすり抜け
立ち上がろうとコートについた腕には
全く力が入らない。



自分は見つくしてしまった。

全国一の夢を
彼の隣に
唯一無二の相棒として立つ事を

そして今、限界を。

全てを知ってしまい、絶望し
打ち砕かれた。



「俺、は…」

「君はキセキの相棒にはなれないよ」








聞きたくない、言葉だった。
でも、少し、考えていた。

相棒としての資格を。

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