黒子のバスケ

□今まで何回
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ボールの弾む音が
夕焼けの空に吸い込まれて
冷えてきた風に
気持ち良く目を瞑る。

シュパッ

ゴールに
ボールが吸い込まれた音がした。

瞑る目の奥に
鮮明にボールを打つ彼が見える。
しなやかに伸びる長い手脚。
力強い脚の踏み切り方。

独特の赤い髪に
濃い青が重なって
すぐに消えた。

「なにぼーっとしてんだよ」

怪訝そうな顔で
コツンとボールを
僕の頭に当てた。

「…なんでもないです」

隣のベンチに腰掛けた彼。

流れる雲が
心なしか遅く見えた。

「…?」

いきなり肩を寄せられ
触れた唇が熱を持ち
不意を突かれた事に
顔の火照りが無いか不安になった。

「…今まで何回俺とアイツを重ねた?」

その言葉に
心臓をえぐられるような
突き刺さる感覚が体を抜けた。

「…やっぱ図星か」

呆れたように鼻で笑うと
ベンチに座ったまま
ゴールへボールを投げると
それはリングに嫌われ
地面を数回飛んでから
情けなく転がった。

腕を引かれるがまま
胸に収まり息を吸うと
彼とは違う彼の匂いを連想し
またそれは消えた。

「………好きだ」

ボールの音のように
その声も雲に吸い込まれ
僅かな余韻を残した。

「……………僕もです」

自分でも
残酷だと思った。
いつまで経っても
その答えは出ないハズなのに。



今、この距離が
彼への距離。






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