テニスの王子様vol.2

□愛してる
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例えば
この動く箱は誰が作ったのだろう。

これは電車と言うらしい。

自分の掴む吊り革も
立っている鉄の床も。

前を見れば果てしなく続くレール。

レールを敷いたのは誰?
レールが敷かれている地面に
コンクリートを敷き詰めたのは誰?

線路に沿って建つ住宅。
この世で
一番はじめに家を建てたのは誰だろう。

ただの組み立た木の板を
家″と名づけたのは誰だろう。

ボーッと眺める外の景色は
急かすように移り変わる。


―ゆっくりでも良かろうに―


蕾を飾っているであろう桜並木も
誰に気に止められることもなく流れていく。

…桜の花に
はじめに桜″と名づけたのは誰だろう。

第一さくら″の言葉は
誰が生み出したんだ?

無限に続く疑問。

浮かんでは消え
浮かんでは消え

―辞めた。疲れる―

そう思っても
懲りずに出てくる想いに終止符を打つために
意識を闇に葬る事にした。

数分もしないうちには
寝息を立て始めた気がする。
窓から入る日差しに
包まれる幻想を抱きながら。

「……う君…仁王君。起きたまえ」

聞き慣れた声に
徐々に引き上げられ
目を開けると
眩しく夕日が飛び込んだ。

「疲れたんですか?よく眠っていましたよ」

こっちを向いて
小さく笑う柳生の頬は
薄い桜色に染まっていた。

―あぁ。好きだ―

揺れる電車。
触れる肩の温もりは
包み込む光よりも暖かい。

「まーくん帰りたくないけぇ。紳士さん泊めてけれ」

肩に頭を預け
ボーッと窓の外を眺める。
流れる景色
どれも答えはない。

「全く。またふざけた事を」

呆れた声を出しつつも
笑みを咲かせたであろうそいつの顔が
あまりにも容易に浮かんだのに驚いて
熱も持った頬に
自分の冷たい手を当てた。

―好き″は誰が考えたんじゃろ―

こんな気持ち
言葉に表すには物足りない。

それでもこの2文字が
やたら胸を埋め尽くすから、
もどかしい。

「…ばーか」

こいつのせい。
この気持ちは全部。

掴んで離さない。

「な?!馬鹿とはなんですか!口が悪いですよ」

好きだ。
これは模範ではない

正確な答え。それは…?











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